「景況にはっきり不安感〜卸・小売業は4年連続の水面下〜」2018年度第2回 会員企業の経営課題と政策提言についてのアンケート集計
2019年1月10日~1月31日に行いました、2018年度第2回の会員企業の経営課題と政策提言についてのアンケートの集計結果の概要と特徴をご報告します。県全体の傾向については、同友ひろしまに掲載されていますので、本紙では福山支部についてご報告します。
このアンケートは、グループウエア(e.doyu)のアンケート機能を使用して行いました。調査対象は広島県中小企業家同友会会員2598名。回答数は633件(福山支部は210件)、回答率は24.4%(福山支部32.2%、福山支部以外21.7%)でした。ご協力に感謝申し上げます。
■回答企業の業種構成
回答頂いた企業は、製造業が約27%、建設関連業が約16%、卸・小売業が約16%、サービス業が約32%、その他が約8%でした。
後に、福山以外の地域との比較もありますので、それ以外の業種分布もグラフにしてあります。他地域と比べて福山支部の回答は、製造業が比較的多く、建設関連業が比較的少なくなっています。
■景況にはっきり不安感
ビジネスモデルの再検討も 今回のアンケートでは、経営状況DI(良いー悪い)、経常利益DI(黒字ー赤字)、1年後の見通しDI(良くなるー悪くなる)の3つが、もちろん水面上にあるものの、右下がりになっています。特に1年後の見通しは、昨年7月から約12ポイント、昨年1月からだと15ポイントの下落になっています。
福山支部の回答を業種別に分析すると、建設関係はこの5年間、おおむね好調を維持しています。製造業は16年にゼロに近づきましたが、以後はおおむね堅調に推移しています。サービス業は14年10月に水面に上がり、以後は堅調に推移しています。小売業は全体にマイナス基調で、厳しい状況にあるようです。福山以外の平均でも19年1月で2.6ポイントと厳しい状況ですが、プラスになっています。2017年7月アンケートで、福山支部の卸・小売では、福山以外の回答者に比して「品揃え」「立地」「固定客」などを強みとする回答が比較的多い反面、「サービスの質」「価格」「取引先・顧客との近さ」などが低く回答されていました。こうした傾向が福山地域の卸小売業の一般的傾向だと言えるのならば、ビジネスモデルや経営上の力点について基本的な見直しが必要な時期になっていると言えるでしょう。
業況の見通しを業種別にみると、建設業・サービス業の見通しが明るいようです。建設業では福山は好調、他地域はそれほどでもないようです。水害の対応、人手不足による受注価格の高止まり、環境問題への対応、インフラ等の修繕期など、対応力のある企業では、当面受注には事欠かない状況になりそうです。一方で、製造業ではやや陰りが見えているようです。卸・小売業は今後も厳しい状況を想定されている会員が多い様です。
■深刻さが続く人手不足効率で乗りきるが福山流?
経営課題では、15年10月から「従業員の不足」がトップに立ち、それが続いています。グラフ「従業員数」で明らかなように、人材の過不足感(不足ー過剰)に対して、従業員の増減DI(増加ー減少)はかい離しており、深刻な課題となっています。
人手不足の関係から、人件費の増大が第2位になっています。熟練技術者の確保難も4位になっており、下請け企業の確保難もじわじわと上がってきました。こうした人材問題が厳しい傾向は労働年齢人口が減少し続けている以上、今後も続くと思われます。また、取引先の減少もじりじりと上昇する基調です。地域での企業数減少が懸念されます。
同業者間の価格競争は、なお20ポイントを超えていますが、落ち着きを見せているように見えます。取引先からの値下げ要求は4〜5ポイントで推移していますので、今後は各企業の価格交渉力が問われそうです。
経営上の力点では、付加価値の増大がややポイントを下げていますが、トップに上げられます。2位の新規受注確保とは約20ポイント差になっています。福山以外との比較では、両項目とも数値が上回っています。福山以外では、両者のポイント差が縮まる傾向にありますが(19ポイント→13ポイント)、福山ではその傾向はでていません。
高い比率になっているのが社員教育と人材確保です。経営上の課題の「従業員不足」を受ける形になっています。中でも一貫して社員教育が人材確保をリードする傾向にあるのは、福山支部の特徴です。人材確保をしたいのは山々ながら、それが難しいのならば、社員教育に力を入れて経営効率を上げる。従って、新規受注は大事だけれども、それよりも付加価値の増大が第1のテーマになっている。こんな見方もできるのではないでしょうか。
新規事業展開は20ポイント前後で、財務体質の強化・情報力強化・得意分野の絞り込みなどは、おおむね10〜15ポイントで推移しています。
■消費増税への対策は、コストダウン!?
消費税の増税の影響を伺いました。第1位に「売上の減少」、続いて「利益の減少」「購買意欲の減少」という関連する項目が高率になっています。
福山以外との比較で気づくのは、「影響はない」という回答が多い反面、「売上減少」「利益減少」を懸念している方が数ポイント高いことです。先に指摘した卸・小売業の方々の業況や見通しDI、17年の「強み」の傾向も影響している可能性があります。
これは、消費増税を契機にした自社対策や検討事項にも影響しています。「コストの見直し」「高付加価値化」「生産性の向上」が、比較的高い数字になっています。逆に「価格転嫁対策」が低くなっています。つまり価格転嫁よりも、コストや効率、付加価値増大で乗りきろうという傾向が見えているとも取れます。もちろん働き方改革への対応に、こうした取り組みは不可欠ですが、同時に顧客との近い距離づくり、関係性の強化なども大事な課題ではないでしょうか。
■BCPはこれから着手
昨年7月、福山市も大雨による大きな被害を受けました。これを機に、BCPの策定状況について伺いました。策定済みが3.6ポイント、策定中が6.7ポイント、策定の予定が27.2ポイントで会員の3分の1が何らかの取り組みをしています。その反面、「BCPを知らなかった」が28.2ポイント、予定なしが33.3ポイントでした。福山は比較的災害にあいにくい地域だと思われていますが、リスク管理の一貫として取り組んで行くことが大事です。政府のチェックリストは項目も多く難物ですが、まずは緊急時の連絡体制の構築や、会社の備蓄品計画などの簡単なものから、経営指針書の中に盛り込んでいく方法もあると思われます。昨夏の記憶が新しい内に、アクションを起こすことが大事です。
■アンケートへの更なるご協力を
アンケートは、回答数が多いほど確度が高くなり、精査できるようになります。それは自社の経営戦略を構築するために、情勢をつかむのに大いに役立ちます。アンケートに回答する中で自社の取り組みを振り返ることもできます。アンケートに回答するのは、皆様自身の経営に役立つものです。e.doyuのスマホ版もでき、回答が簡単に行えるようにもなりました。
次回は7月の予定です。ぜひ、更なるご協力をお願いいたします。