広島安佐支部 新年互礼会 新春例会(一月二十二日) 「伝統×革新」で新しい価値を創造 ~挑戦の連続が新市場~
報告者:㈱晃祐堂 取締役社長 土屋 武美 氏(広島東支部) ㈱晃祐堂 土屋 武美 氏
晃祐堂理念 :技術、品質、コストを究める ・国際的視野で未来を見つめる ・人材を鍛え育てる ・お客様の喜びを目指し、感謝の心で行動する
●「熊野筆」の歴史的背景
我が社は1978年創業、熊野町に本社・工場・熊野筆工房をおき書筆・化粧筆の生産販売している会社です。また、東京支店、中国四川省、江蘇省、ベトナムにも生産拠点を置いています。 熊野筆は1975年に通産省より伝統工芸品としての指定を受けます。伝統的工芸品とは、伝統製法で伝統的な昔ながらの材料を使用して作られる「書筆」にのみ使用されるものでした。
その後、2004年に団体商標としての「熊野筆」を取得し、熊野町内で生産される書筆、画筆、化粧筆すべてに「熊野筆」をうたえるようになりました。 熊野町は人口2万4千人、商工会の統計では企業数700社、うち熊野筆の仕事に関わっている会社は99社。熊野筆全体の売り上げは150億円です。
筆業界も他業界と同じく「少子化」の課題を抱えています。書道を習う児童の数自体がどんどん減っている以上、市場は縮小するのは目に見えています。さらに、中国から仕入れる原材料費の高騰もあり、どう付加価値を高めていくかが、経営上の最大の課題です。
●プラスαで引き付ける
書筆の製造工程は約70の工程があり、伝統製法を活かしつつ、各社でノウハウがあります。弊社には伝統工芸士3名が在籍、OEM対応、「天平筆」など高い技術を要する筆の製造が可能です。
一方で化粧筆は約30の製造工程です。芸術性を追求し、現在は海外にも生産拠点をおき工業性も必要になっています。熊野筆としては、新たな分野・市場開拓が求められているのが現状です。
弊社では2004年より化粧筆製造を始めました。書筆の製造技術を生かし、毛先が柔らかで高品質が特徴です。しかし、同業他社製品と比べて差別化が出来ていませんでした。道具としての用途以外のプラスαで人を惹きつける事が課題でした。
転機は、経済産業省「カワいいモノ」研究会との取り組みでした。手に取ってもらいやすい、新たな顧客の開拓、広告塔としてのブランド化という効果を生み出してくれました。その商品は「『カワいい』熊野筆SOMELL GARDEN」として結実します。
現在展開している主な商品を少しご紹介します。「ハートのチーク」は、毛の部分をハート型の形状に加工したものです。開発に時間がかかりましたが、ブライダル市場に向けて展開できるようになりました。「IRODORI(いろどり)」は、書くことを楽しむ“筆記具の新定番”というコンセプトで、ぬり絵を楽しんでもらえるように開発した商品です。 ご紹介したのはほんの一部で、これまで様々なコンセプトでたくさんの新商品を開発してきました。ただ、もちろん失敗の方が多く、打率なら二割程度です。「冒険家になったつもり」で取り組んでいます。最終的にはやってみないと分からないので、「とにかくやってみる」を大事にしています。
●子どもたちの未来のために
ある人から聞いた「一歩踏み出す勇気」という言葉が好きです。失敗もいろいろですが、大事なことは覚悟、そしてやり続ける力だと考えています。もっといろんなことをもっといろんな方とやってみたいと思っています。それは一過性ではなく、子どもたちが安心して住める街にしたいという「未来」に続くためのものをめざしています。 他者からの刺激が、新しい発想や商品を生み出してくれます。そんな刺激の場が同友会だと思っています。今日もたくさんの刺激を頂きました。ありがとうございました。