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2019.01.05

第2分科会 「四国で一番大切にしたい 会社大賞」に選ばれた理由 ~社員から社員へ、学びの連鎖を会社の風土に~

報告者:㈱世起 代表取締役 今村 暢秀 氏 (愛媛同友会、求人教育委員長)

【会社概要】
■設立:1970年
■社員数:46名(内、パート29名)
■資本金:1000万円
■年商:6億円
■事業内容:菓子製造、卸売業
■ホームページURL http://www.seiki-net.co.jp/

 第2分科会のテーマは「社員教育」でした。
 開会にあたり、座長の川口氏(㈱デイ・リンク社長、県求人社員教育副委員長)が「人を生かす経営の実践」をすると企業はどう変わるのか、今村氏の実践から深めていきますと、あいさつしました。以下、今村氏の報告要旨です。

■パートナーになれる!?

 わが社は松山市の西隣、人口3万人の伊予郡松前町で、餅や飴などの和菓子を作っています。
 私は2代目です。高校卒業後、4年間他社でお菓子作りを学んだ後、包装資材を扱う会社に2年半務めました。1993年に自社に入社しましたが、修行中に得た経験と知識は、今でも役に立っています。
 同友会には2005年に入会しました。経営指針セミナーや同友会大学で聞いたことや感じたことを自社に持ち帰り、一つ一つ取り組んできました。そうできたのは、良い先輩に恵まれていたからだと思います。先輩方の会社は、社員さんがイキイキして、あんな会社になりたいなというお手本でした。
 私も同友会で学んで、人は変わるという経験をしました。わが社には、コミュニケーションが下手で、表現が苦手な社員がいます。でも、働く姿勢は一生懸命です。人を生かす経営には、社員と経営者はパートナーになれると書いてあります。そのことに私が気がつくと、イマイチな社員は、よい社員に変わっていました。

■10年前と10年後

 わが社の商品は道の駅・高速道路・旅館などでお土産として販売されています。現在、量販店・空港で外国人観光客向け・海外での販売が増えてきています。
 売上比率では、お土産は減少傾向。量販店が増加傾向にあります。
 わが業界は、10年前と比べて、値上げの嵐です。輸送コストは半期に1度上がります。原材料・包装資材・消費税。わが社は値上げのタイミングを推し量っています。人のことでは、定期採用できていなければ、社員が歳をとった分パワーダウンします。そういう取引先の変化も見逃せませんし、常に新しい得意先を探す活動をしています。

■倒産の危機をのりこえて

 16年前、わが社は、商品が売れず経営が苦しい時期がありました。社内は、お互いが協力しない雰囲気になり、工場の床は、きな粉で茶色く変り果てていました。
 支払いを優先させ、給与の遅配までおこりました。父である社長は、会社を維持しなきゃいけないという思いで、取引先に何度も頭を下げてまわり、支払いを延ばしてもらいました。
 父は創業者でカンと経験と度胸がありました。ルート営業をやめ、製造に特化する決断を下しました。2002年に自社商品が開発できヒットしたことや、取引先や、社員が待ってくれたおかげで今があります。私は経理担当の専務として、信用の失墜、倒産の危機を経験した時期でした。
 私は2011年に社長になりました。「お父さん越えないかんよ」と周りから言われていたこともあり、父を超えようと思っていました。
 そのため社長とは意見が合わず、経営がしんどい時、社長の新商品やサービスについての提案を、専務として費用が掛かります、と反対していました。社員には社長が言っていることは難しいよな、と言っていました。
 社長になって、社内をバラバラにさせたのは私のせいだったと分かりました。少しずつ改善していこうと取り組み、今回の四国で一番大切にしたい会社大賞受賞に結び付きました。
 この賞は、四国経済産業局が主催し、応募制です。わが社は、勉強会で知り合った大学の先生が「㈱世起さんいいんじゃない」と四国経済産業局に言ってくださったご縁でエントリーしました。
 受賞した3社の内、2社は同友会(㈱シケン・徳島、㈱世起)です。授賞式の記念講演をされたのも同友会(拓新産業㈱・福岡)です。同友会のやっていることに間違いはないと思いました。
 わが社の受賞理由は、ブラザーシスター制度、環境整備、経営サポート部などが評価されました。手形での支払いは見直しました。離職率は低くはありませんが、社内での聞き取り調査で、社員が良く言ってくれたのだと思います。  受賞後、社員同士の協力関係が良くなったと感じています。

■迷子にさせない

 採用と育成は未来への投資だと考えています。
 採用活動は、以前は人が辞めたらしていました。今は方針に沿って行い、社員教育は、社員を次のステージにあげるために行っています。
 社員には人生があります。だから会社には計画が必要です。初めて経営計画書を作って社内で発表したとき、若竹屋酒造場の林田さん(福岡同友会)から学んだ「迷子の3要素」を紹介しました。
 そして社員が迷子にならないように、①財務状況を伝え(現在地)、②今期の売上目標を示し(行き先)、③目標達成のために、新商品開発・機械の導入・販売計画(方法・手段)を示しました。
 経営計画をつくり今年で7期目です。毎年、新しい社員が入るので、迷子の3要素を説明します。経営者として、社員が夢を持って楽しく仕事ができる会社にしたいから、事業拡大を宣言しています。

■日々、社員共育

 経営は前払いだと思います。
 日常の取り組みでは、まずブラザーシスター制度です。先輩が後輩の仕事を見る仕組みです。取り組んで5年になりますが、2年前の失敗から学んだことがあります。
 上手く行っていると思った矢先、新人が辞めたことがありました。朝礼で、自分たちに落ち度はなかったのか投げかけました。そして2人ともキャパオーバーにさせないように「2人で1人分の仕事でいい」となりました。「ちょっとできません」という声が現場からなくなり、定着率が良くなってきています。
 法令順守では、同友会の先輩から「会社を発展さようと思ったらちゃんと法律通りやらないかんよ」と言われました。それを聞いて、残業代込みの給与体系から、当たり前の給与体系に変えました。会社の体制がしっかりしていないと、求人活動はもちろん、会社の未来を語ることはできないと思っているからです。
 社内の環境整備では、毎日15分間、畳1枚分のワックスがけをしています。まずは事務所から始め、3年間して工場でも始めました。徐々にしたおかげで、15分時間をとっても就業時間内に終わらせています。
 週初めのハイタッチのあいさつで、社内に明るい声が響いています。
 事務所の社員は、会社やお客様のことを1番知っています。これはと思い経営サポート部にしたところ、営業活動に幅が出てきました。
 問題が起こると会社の方針をもとに説明します。1人の問題ではないから人前で注意しています。以前、先輩社員が後輩に自分の3か月目と比べて「やる気がないなら辞めてもいいよ」と言ったことがありました。朝礼で、新人を入れるのはみんなが次のステージに上がるためで、会社を良くしていくことだと方針を説明しました。その後、社員は考え方を変えて一生懸命がんばってくれています。

■やるか、やらないか

 社員の潜在的な力を発揮させたいと思っています。
 会社には、不器用な社員も、少しややこしい社員もいます。社員の役割や成長に気がつけば、社員はみんなよい人です。
 10年後を見据えて、20代の社員が販売活動で力を発揮できるように育てています。そのとき私は60代。社員と共に、値上げを跳ね返せる売上をつくりあげます。
 同友会で先輩から「やるかやらないかは、あなたしだい」と言われたことがあります。
 私はやります。