調査 仕事はあるが、人がいない ~社員の採用・育成・定着を本気になって考えよう~経営環境アンケート
政策委員会(宮崎基委員長)は、7月3日から3週間、今年度第1回のアンケート調査を実施しました。回答いただいた474名の皆さん、有難うございました。概要を紹介します。
(※DI=傾向をみるための数値。DIが100に近づくほど良い(上昇)、-100に近づくほど悪い(下落)ことを意味する)
改善続くも、人がいない
会員企業の経営状況を示すDIは25で、前年同期より9ポイントも改善しました。09年のDIは-53を示していましたので、9年間で大きく改善(その差は78ポイント)しました。しかし、改善の傾向は業種間で異なっており(表①)、建設業のDIは31ですが、卸小売りは8にとどまっています。(表①)
「過剰な仕事に人材が不足し、対応できない」との声に代表されるように、仕事はあるが人がいないので売り上げを増やせないのが問題となっています。
経営上の問題点のトップも「従業員の不足」で、半数近く(45%)があげており、人件費の上昇(28%)と仕入れ先からの値上げ要請(16%)も増えつつあります。そうしたことを受けて、経営上の力点は、「付加価値の増大」(61%)がトップで、2位の「新規受注(顧客)の確保」(42%)を20ポイント近く離しており、給与アップや時間短縮などの原資を何とか確保したいという経営者の思いが伝わってきます。
人がいないというのは日本の抱える社会構造の問題でもあり、それは長期に続く中小企業の経営課題でもあります。したがって、若年者の雇用だけでなく、女性や障害者、高齢者の活用など、多様な雇用のあり方(ダイバーシティ)に積極的に取り組む必要があり、検討している企業を含め増えつつ(4年前に比べ10ポイント増)あります。(表③)
特に、障害者を雇用している企業は九年前(8%)に比べ、倍近く(15%)に増えています。
「働き方改革」は、採用・育成・定着の問題としてとらえる
人がいない中で、いわゆる「働き方改革」について聞いたところ、様々な意見が寄せられました。「ただでさえ人がいなくて困っているのに、休日増や時間短縮は出来ない」という厳しい声もありましたが、「長時間働くことが美徳という考え方が当社にはあり、代替わりのタイミングで変えたい」、「生産性を上げる良い機会」との前向きな意見もありました。「社員の採用・育成・定着を考えると、企業にとって避けて通れない課題だと捉えている。多様性を受け入れる土壌を企業内で育むことと生産性の向上など付加価値の増大に取り組むことが『働き方改革』の推進は欠かせないと考えている」との声に注目したいと思います。
「働き方改革」に取り組んでいる企業は41%、取り組みたいと考えているのは47%でその合計は9割近くを占めました。取り組みの実態をお聞きしたのが表④です。「残業時間の削減」や「休暇の取得促進」がトップツーを占めました。
「人」が大きな経営課題になっており、企業の発展のみならず存続がかかっていることを痛感させる調査となりました。