福山支部35周年行事を開催 ~支部の大事にしてきたこと、これからめざすもの~
4月23日、福山支部の35周年記念行事を、福山ニューキャッスルホテルで行い、会員など延べ220名が参加しました。
行事は4部構成で行いました。第1部は、第36回福山支部定時総会。第2部は35周年記念式典、第3部は35周年記念講演会、第4部は記念パーティーです。
■35周年を迎えて新な誓い
支部総会で特に強調されたのは、「変わる」ことです。スローガンには「Let’s Change」を掲げ、「現状の延長である『改善』では、時代の流れについていけなくなりつつあります。抜本的な変化である企業の『革新』を進めていく必要があります」と議案書に謳いました。最重点課題には、企業変革支援プログラムの活用、地区会の適切な姿の検討、系統的な学びの場の構築など、活動をさらに見直し深めるテーマを掲げているほか、支部三五周年を迎えて、地域活動などの新たな活動の模索を掲げました。
■各方面からの祝福も
式典では、粟屋代表理事のご挨拶の後、ご来賓の祝辞をいただきました。枝廣・福山市長は「中小企業は地域を支える柱。経営を守り発展させようという同友会の活動に大いに共感する」、松田・福山大学学長は「若い世代を育てるのは地域の課題。同友会のこれまでの協力に感謝したい」と語り、共に「一緒に地域活性化を一層担ってほしい」と会への期待を述べられました。
懇親会でも、同友会と共に福の山フォーラムを主催する福山青年会議所、日創研福山経営研究会の代表、「福山市の経済と地域活性化を考える会」で協力いただく福山商工会議所の専務理事の祝辞をいただき、両備信用金庫の渡辺理事長の音頭で乾杯を行うなど、各方面から暖かい祝福をいただきました。
■伸びる会社の7つの法則
記念講演は、「日本で一番大切にしたい会社」で著名な、元法政大学大学院教授で、人を大切にする経営学会会長の坂本光司先生にお願いしました。氏は、「伸びる会社の法則は、七項目に絞り切れない」と前置きし、①理念追及型経営、②全方位満足経営、③適切な成長、④非価格競争、⑤独自(自立)経営、⑥全員参加型経営、⑦バランス経営、の7項目に加え、⑧主体性重視経営、⑨中小企業的経営、⑩多機能経営、を指摘し、実践している企業の実例を紹介しながら具体的な取り組みの在り方を語り、参加者に深い感動を呼びました。
パネルディスカッション「同友会が追求してきたこと、そしてこれから」
以下、記念式典で「同友会が追求してきたこと、そしてこれから」と銘打って行ったパネルディスカッションの様子をご紹介します。
■パネリスト
立石克昭氏(代表理事・㈱タテイシ広美社)
岡崎瑞穂氏(理事・㈱オーザック)
河村直孝氏(支部長・㈱カワムラ機工)
■コーディネーター
能登伸一氏(副代表理事・日鐵鋼業)
能登 まず、同友会で学んだことをどう実践したかを通じて、会が何を大事にしてきたかを確認したいと思います。
立石 私が入会したのは求人が目的でした。元は「経営指針は不要」派でしたが、経営者の仕事は社員に夢を与えることだと気づき、経営指針書の重要性を理解しました。大事にしているのは、理念の共有と個人の思いの実現です。
例えば、東日本大震災直後に京都で災害対策の電光掲示板設置の仕事があり、以後その方向に事業を振りました。社員からは「こんな時に」という批判もありましたが、「文字情報の伝達業」という我社の理念を確認することで、共感を作り出すことができました。
また、経営指針書の中に社員個々の目標を書き込んでいます。内容は何であれ、会社はその実現に協力するようにしています。
岡崎 我社の同友会入会はバブルが頂点を迎える直前。採用が一つの目的でした。以後、大変厳しい時期が続き、それを乗り切るために経営指針作りをはじめ、会社をきちんと機能させることに注力してきました。
ところがせっかく採用した人が辞めていく。そこで何が不満なのか、どうすればそれを解消できるかに取り組んできました。そこから、仕事の効率化や多能工化などに取り組み、残業時間は十分の一に減りました。また女性社員のために、育児室を作ったりしました。結果、定着率は劇的に向上し、現在ではほとんど退職者は出ません。
それが評価されたのか、内閣府の働き方改革実現会議の有識者に、中小企業でただ一社選ばれました。
河村 家業的な自社を何とかしたいと悶々としているときに誘われて入会しました。
学んだことを即実践、が私のテーマでしたが、新しい取り組みが定着しない。これを打破したのが、新卒の女子社員なんです。彼女が指示されたとおりに取り組む姿を見て、みんながまねを始める。そんな変わり方でした。
それからは、例会などで悩みを打ち明けては、アドバイスをもらい、それを丁寧に取り組んできました。こうした取り組みが、同友会の学びの神髄ではないかと思います。
能登 先ほどの支部総会でも、地域での取り組みが、支部の新しいステージに取り上げられていますが、皆さんの会社での実践はいかがでしょうか。
立石 私は府中市の明郷学園の学校運営委員会の会長をしています。スローガンは「地域の中に学校を、学校の中に地域を」です。新しい取り組みをするのではなく、今やっていることについて、学校と地域を結びつける活動をしています。先生や生徒は担当地域の祭りに参加する。地域の人は学校行事に参加するなど、専門的な技能を発揮する場を提供する。地域の資源を縦横に活用しようというわけです。現在は不登校がゼロになりました。こうした活動に、地域に生きる企業は大いに力を発揮できると思います。
岡崎 我社では年に3日、地域活動休暇、というのがあります。学校や町内会の行事やランティアなどに参加できるようにしたのです。取得率は意外に高いです。
地域が疲弊しているという一端には、活動を担う人が高齢化しているという現実があります。他方、ボランティア活動が盛んになっているように、若い人には社会との関わりを持ちたいという欲求もあります。それに会社として応える必要があるのではないでしょうか。
障害者雇用にも取り組んでいますが、一人一人の個性や持ち味を大事にするのは、同友会がめざしている方向性の一つであり、社会に定着させていきたい考え方だと思います。
河村 私たち地域に生きる中小企業にとっては、地域の課題は重い問題です。様々な課題について、中小企業らしい関与が求められていると思います。
例えば、中小企業の採用難の一端には、私たちの存在が地域に知られていないことがあります。総合学習やインターンシップなどでは、中小企業の方が職業観や仕事観を伝えやすいと思いますし、存在をアピールする力になると思います。そうした場に、今後大いに関係したいと思います。そのためには、基本的な組織である地区会を、エリア別に編成しなおすような取り組みも必要になるかもしれません。
能登 打ち合わせで話をしたことで今日お話しいただけなかったことも含めて、まとめさせていただきます。
第一は、会社は社員一人一人のモノであるということです。私を含めた四人の共通目標は、社員の息子や娘が入社したいと言ってくる会社です。
第二は、経営には特効薬もウルトラCも近道もない、ということです。地道で愚直な実践の積み重ねが求められるということです。だからこそ我々福山支部会員は主体者となって同友会と関わり、会社にそれをどう生かすかが問われているのです。
第三に、地域の会への期待はますます高まっているということです。こうしたことを踏まえて、古くて新しい同友会の活動を展開していくことが必要です。