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2018.05.12

福山支部政策環境委員会三月度勉強会 AIで世界はどう変わるのか ~新しい産業革命「人工知能」の実態 福山大学工学部 教授  金 子 邦 彦 氏


■AIとは何か
 AIとは、一言で言えば「予測するマシン」です。膨大なデータを元に、分析し、パターンを見つけ、判断し、予測します。したがって、大量のデータを与えて育てる必要があります。
 すでに、チェスや将棋、囲碁までもが、人間をこえる能力を持っています。クイズ番組ですら、人間のチャンピオンに勝つことがあります。賢い掃除機、賢いスピーカーなど、AIは、すでに我々の身近にあります。AIに様々なソフトウエアと組み合わせることで、私たちは少しの指示で、自分のやりたいことができるようになりました。
 
■AIの限界
 ではAIに死角はないのか。実は限界があります。データの少ないもの、例えば突発的な出来事や、不測の事態には対応できません。コンピューターも間違うことがあるのです。ただ、「だまし」「誤った知識」「勘違い」などからくる人間の間違いとは、意味が違うのです。
 また、他者理解や協調と言ったコミュニケーション、抽象概念を扱うもの(芸術・哲学・神学・歴史学など)などは苦手な分野です。
 分析や予測はできますが、自分でソフトウエアを書くこと、つまり自分で意思決定をする事は、今のところできません。
 
■ドラえもんの本質はセンサー
 ドラえもんはロボットです。このロボットは当然AIが組み込まれているはずですが、すごいのはAIではなくセンサーです。つまり、目・耳・鼻などで状況を正確につかみ取ってAIで分析し、最も適切と思われる答えを出す力があるのです。
 AIには感情はありません。しかし、ふさわしい表情や表現を選択することはできます。
 
■AIにできること
 現在、AIができることは、
①音声の認識(人の声を文字化する)、②画像解析(画像の中からものを見つける)、③創作(簡単なスケッチなどを詳細な完成品にする)、④欠損の補充、⑤自動運転車、⑥翻訳、といったことです。つまり定型的なものは、AIに置き換わっていきます。逆に仕上げ作業やクリーニングの取り次ぎなどの複雑な作業には不向きです。
 コンピューターの普及によって相互学習ができるようになりました。今後加速度的に進歩を遂げていくでしょう。
 
■AIのこれから
 AIは今後、①どんな質問にも正確に答えてくれる、②命令を正確に理解しその通り実行する、③目的達成のために最善の方法を自分で探す、の3つのタイプで進化する、という説があります。
 また、多くの研究者は2040年までにAIが人間を越える(人間が行っていた作業を、人間の手を借りずに、人間の労働者よりも上手に安価に行える)と信じています。

■社会への影響
 AIはすでに社会に浸透しています。今後さらに、生活や文化の変化を迫っていくと思われます。
 新しい産業が生まれる可能性もありますが、AIとロボット化が、今後、雇用を失わせることは間違いありません。その時、「働きたくても仕事が全くない」社会になるか、「喜びのために働く時代」になるかは、わたしたちの選択にかかっていると思います。「ベーシックインカム」が必要だと指摘する識者もいます。
 
■私達の選択肢
 AIは人間を駆逐しません。AIは人間と同様の知性を示すだけです。いずれ人間を追い越すという学者もいます。私達からすれば、やりたい事がやりやすくなるという事です。人間とAIが手を取りあえば、人類のグランドチャレンジ(人類の存続、資源の永続、紛争の廃絶…)を実現することも可能になるかもしれません。そうした予感を持ちながら、正しくAIを使っていくことが大事だと思います。