学校との共育懇談会(2018・2・19) 「真の人を生かす経営とは」
新卒者の採用活動が本格的にスタートする時期を控え、求人社員教育員会は今年も学校との共育懇談会を開催しました。企業の人材不足や採用難が社会問題として注目される中、求人社員教育委員会は、共同求人活動が単に人を採る活動ではなく、就業規則や賃金規定の整備などコンプライアンスを重視した企業づくりであることを確認し、活動を進めています。
以下、今年の懇談会の報告概要を掲載します。
■安心して働ける企業づくり
当社は東京でソフトウェアの受託開発及び自社製品の研究開発をしています。1987年の会社設立時に数名の社員を採用し、翌年には新卒の採用を行いました。
同友会のバイブルと言える「人を生かす経営」では、経営者の姿勢や責任、社員との関係が書かれています。その中で「労働者は一定の計画に基づいて、経営者に労働力を提供する」という一文があります。一定の契約とは、就業規則で定めるべき労働条件のことです。
従業員数が10人以下の企業は、監督署に就業規則の届出義務がないことから、整備が遅れていることがあると聞きました。働く条件が規定されていなければ、社員は将来を含めた生活設計が描けません。経験を重ねた社員が待遇改善を望むことは当然のことです。就業規則がなければ、それを考える根拠すらないのです。これは人間尊重を根幹とする同友会の理念に反するだけでなく、よい会社づくりをめざす共同求人活動の本当の姿とは言えません。
人は安心できる生活を送ることで、精神的な充足感を得られます。不安を抱えたままでは、社員も定着しません。社員が安心して働けない企業に、学校は大切な学生を送り出すことができるでしょうか。
広島では共同求人活動の参加にあたり、就業規則や賃金規程の提出を徹底していると聞きました。学校に自信を持っておすすめできる企業の集まりだと思います。しかし、就業規則は本来、共同求人活動の参加を目的に作るものではありません。経営者の責務として、取り組むべきものなのです。
■自社の強みを伝えていますか
人間尊重の経営をめざす同友会の共同求人活動は、採用を直接的な目的としていません。採用は地域経済を支える人材を育成するための活動であることや、若者と生きる喜びを与えられる企業づくりをめざすことなどを理念としています(参照「持続可能な企業と地域のために」)。
その一方で、「共同求人に参加しても採用できない」と嘆く声がたくさん聞こえてきます。採用難を嘆き、外部に責任転嫁してはいないでしょうか。本来、経営者がすべき努力を忘れて共同求人活動に参加しても、人の採用はできません。当社では学生を待つだけでなく、いろんな学校を回り、会社のことを伝えています。会社の強みを把握し、それを伝えている中小企業は多くはありません。自社の魅力や強みを伝え続ければ、わかってくれる学生はたくさんいるはずです。
労働者の7割が中小企業で働いているという数字が示す通り、中小企業と地域は支え合っています。地域の皆さんの理解を得るために、大学等で中小企業の魅力を伝えている同友会もあります。地方創生には大学と企業の力が必要です。ぜひ学校の皆さんにも地域の中小企業に目を向けていただきたいと思います。
■人を生かす経営とは
人を生かす経営とは、経営者と社員が会社という共通基盤となる価値観を共有し、より高い到達点を共にめざすことだと考えます。
採用がよい会社づくりの第一歩だとするのなら、共同求人を行うことは、よい会社づくりの実践だと言えます。採用しなければ現在の社員の定年を迎えた時が企業の寿命となりますが、採用したからといって企業が継続したり、成長出来る訳ではありません。人は教育によって成長し、世の中の変化に対応できる力を身につけます。それが会社の力となり、地域経済の活性化になります。これが人の成長がもたらす良い循環であり、企業の社会貢献活動です。多くの人がこのことを実感できる会社づくりを期待しています。