地域内連携推進委員会 地域で仕事をつくり、お金がまわる仕組みづくり ~本業でエネルギーシフトをすすめよう~
■「零(ゼロ)」に込めた思い
建築工房零はその社名の通り建築業を営んでいます。私が28歳の時に創業し、今年で14年目を迎えます。
社名に込めた思いは、世の中全体が「モノがたくさんあれば幸せだ」という価値観の中で、「本当に幸せになったのか」という疑問です。
例えば、今は一家に一台どころか各部屋にテレビが置かれる時代になりました。しかし、「テレビが置かれた数だけ幸せは増えたのか」。これからの幸せを考えた時に、不必要なものを削ぎ落とすことによって、本当に必要なもの、幸せが見えてくる。それを、家づくりを通して提供したいと考えています。
■創業の精神
50年後、100年後の子どもたちに、私たちはどのように評価されるでしょうか。「立派な人たちだった」?それとも「最低な人たちだった」?
私はこのままの世の中では「最低な人たちだった」と言われてしまうと思います。資源を浪費し、地球を汚し、あとのことは考えない。今私たちはどのような選択をすべきか。そういう思いが当社の「健やかな地球、健やかな暮らし、健やかな人生」という経営理念に込められています。
■地域経済とエネルギー
人は自治体に住み、税金を納めています。この自治体の税収とその自治体に住んでいる人たちがエネルギーに支払っている金額はほぼ同額だといわれています。
実は日本のエネルギー自給率は6%で、残りの94%は外国に依存しています。それほど莫大なお金が海外に流出しているのです。
オーストリアでは、観光業の次に林業が栄えています。木材の建築材としての輸出、そして国内のエネルギーをバイオマスで賄おうとしているからです。かつてオーストリアはロシアからの天然ガスに頼っていました。しかし、エネルギーを他国に依存していてはまずいという危機感から、自給に取り組みました。
■不安の要因は依存
日本はエネルギーのほとんどを海外に依存しています。世の中には戦争や経済破綻など多くの社会不安がありますが、その不安の要因は依存から来ていると思います。不安を払拭するためには、自立する必要があります。
エネルギーシフトとは自分たちの手にエネルギーを取り戻そうという運動だと考えています。エネシフとはテクノロジーシフトではなく、価値観のシフトです。新しい機械に頼るのではなく、暮らしを見つめ直すのです。
そのための私たちの取り組みの一つが薪ストーブ、ペレットストーブです。自分たちの地域で作られたエネルギー(木材)で暖をとる。実は石油ストーブと比べて二酸化炭素の削減にもつながります。
地域でエネルギーを作るということは地域に雇用が生まれるということでもあります。ここで地域の主役たる中小企業の出番です。それぞれの地域で、地域のエネルギーを、地域の中小企業が、地域の資源を利用して、地域の人たちと取り組んでいく。
■本業を通じて地域貢献する
中小企業の地域貢献とは何か。例えば、総売上のうち数パーセントの経常利益の一部で木を植えたり、寄付することが地域への還元かというと、私は違うと思います。総売上を生み出すプロセス(人件費や材料費をどこに払うのか)、最も大事なのは本業を通じて社会に何を提供するかが地域貢献だと思います。だからこそ、本業で生み出した利益は内部留保や設備投資に充て、本業を強くすることで、本業を通した地域貢献を大きくすることの方が利益の使い方として有益ではないでしょうか。
■地域を変える
今回はエネルギーの話をしましたが、これはエネルギーに限ったことではなく、食料や雇用にも言えることです。遠くに依存するのではなく、自分たちの手の中に取り戻すべきなのです。それにはひとつの地域が変わるだけではなく、日本のすべての地域が変わる必要があります。皆さんで地域を、日本を取り戻していきましょう。