役員研修大学 第7講 10年後に自社はあるか ~企業変革支援プログラムを活用しよう!~
報告者‥セイコー運輸㈱ 代表取締役 宮高 豪 氏
(大阪同友会)
■企業変革支援プログラムとは?
企業変革支援プログラムとは、労使見解で求められている経営の具体化とその成熟度をチェックするツールです。
「経営者の責任」「経営理念」「人を生かす経営」「市場・顧客」「付加価値」の5つのカテゴリで構成されています。
企業変革支援プログラムができるまでは、各地の同友会がバラバラに経営の勉強をしていました。これをひとつにまとめようと中同協経営労働委員会によりプロジェクトチームが発足し、2009年に完成しました。
■経営に生かす
経営とは植物のようなものです。売上や社員数などの数字として目に見える部分が木の幹や葉だとすれば、社員の自主性の発揮、お客様満足度、強みと弱み、技術の伝承などは土に隠れてしまって目に見えない木の根です。この根っこについて記されているのが「労使見解」であり、経営の成熟度を測るためのツールが企業変革支援プログラムです。
経営指針の実践においても、PDCAを行う際に役立ちます。経営指針は作るだけで終わりではありません。検証していくことが大切です。step1は評価するための経営の診断書として、step2は改善のための経営の処方箋として活用できます。
自社では毎年六月に社員と共にstep1を活用して会社の成熟度をチェックし、弱点を見つけます。今年度もstep2を活用しながら、弱点の成熟度を上げる行動計画を作りました。
■銀行員から経営者へ
セイコー運輸は父が立ち上げた会社です。現在の売上比率は緊急輸送五五%、高齢者向け引越しサービス「シルバー住むーぶ」20%、全国住むーぶ連携事業20%、移動写真撮影業務「フォトすむーぶ」五%です。
私は大学卒業後に銀行に就職しました。しかし、会社が債務超過に陥っていると知り、父の会社に入社します。当時の会社は製造業のようにチームワークで仕事をする風土もなく、社員が好き勝手に自分の手取りのためだけに仕事をしていました。
そんな会社のことで悩んでいるときに同友会に出会いました。入会した1998年は金融アセスメント運動が盛んだった時代で、その運動に共感し、同友会にのめりこんでいきました。
■新しい価値の創造
大阪同友会ではビジョンを作っており、2001年は「実質的で質の高い経営をしよう」でした。しかし、法人減少、高齢化、人口減少と世の中の流れを考えたとき、実質的で質の高い経営だけでなく、改善と変革が必要です。今まであった仕事が1年後、5年後にあるとは限りません。地域の中に仕事を作ること、そして新しい価値を創造していくことが重要になってきます。
そこで自社では、ヘルパー資格保有者による高齢者向け引っ越しサービスを始めました。法律の改正により介護士ができるサービスが減っていくことを知り、部屋の片づけに需要があると思ったことがきっかけです。
「フォトすむーぶ」は、高齢者が引っ越しの際に必要最低限の荷物しか持っておらず、写真も捨てているために遺影写真がないという話を聞き、住み慣れた場所で写真撮影ができる「ヘルパーのいる移動写真館」を始めることにしました。
これらの事業を始めるときや助成金にチャレンジするときにも、企業変革支援プログラムを大いに活用しました。
業界の市場について知り、外部環境がどう変わり、自社がどう行動すべきか。大企業にはできない、自社だからこそできる仕事は何かを考えるきっかけにもなりました。
また、企業変革支援プログラムは個人事業主でも、客観的に会社を見るツールにもなります。
■変革のためのプログラム
先行きの不透明な時代にある私たちは今できることをするのではなく、これからやるべきことに取り組む必要があります。そのために、企業変革支援プログラムを積極的に活用していきましょう。