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2017.12.31

第3分科会 「経営のあり方」を問い、不離一体の姿勢を学ぶ経営指針づくり ~経営指針で10年後のビジョンを描こう~

●我流で経営計画を立てて

 わが社は電気設備の設計施工を主な業務としています。
 私の同友会への入会は、事業継承して落ち着いた2007年でした。勉強できるところを探していて、同友会ならビジネスマッチングもできるとの話を聞いて入会しました。当初はグループ討論が大嫌いで、報告だけ聞いて帰る参加者でした。
 ある時、先輩経営者から「求人どうしてるの?新卒採用しないの?」と尋ねられ、「うちには新卒は無理ですよ」と答えると、「とにかく来てごらん」と誘われ、勉強会に参加することになりました。報告を聞くと、ホームページなしではできないとか、自社ではやっていないことばかり。グループ討論も、メンバーはわが社よりも大きな会社ばかりで、自己紹介しか話せない状況に打ちひしがれました。しかし、ここであきらめずに目標を立てました。
 我流で経営計画書を作成、事業拡大すれば採用できると本気で思っていました。同年に最初の理念を成文化しました。そして計画で立てた売上目標や自己資本比率、新社屋の設立など2年間で達成してしまいました。
 それから新卒を採用しました。指針セミナーを受講しなくても自分だけで計画を立てて目標は達成できる、とおごりが出たのだと思います。

●埼玉同友会の指針セミナー

 埼玉の指針セミナーは全9講、グループ制で半年間スタッフと受講生が共に学びます。おかげで結束力が強くなり、その後も年度ごとに実践交流会を開催。生涯の経営者仲間ができます。
 各グループスタッフからグループ長を選び、グループの舵取り、進捗状況の確認などを任されます。責任重大ですが、人と話をまとめる力、伝える力、傾聴力などを求められ、最大の学びがあります。私自身もグループ長を経験し、とても勉強になりました。
 このセミナーを通じ、半年後に大きく変わる受講生がおられ、委員会スタッフとしてもやりがいを感じる部分です。
 そしてスタッフは実践者としての経験から受講者にアドバイスをします。受講生とのやりとりは、自分自身に返ってきてさらに学べます。委員が委員会に参加する最大の理由は、学べることにあると思います。
 セミナーの特徴は、スタッフが受講生に問いかける形、受講生が気づくことを第一にしている点です。

●会社の問題は社長の問題

 業績に陰りが出た2010年に経営指針セミナーを受講しました。2011年、事業継承以来2度目の赤字に転落。いずれ業績は回復するだろうと思っていました。
 2013年5月の決算では売上も利益も回復。しかし、内実はとにかく仕事を取ってきて、社員に会社の都合を押しつけていました。
 その後、中途採用の子がLINEで辞めると伝えてきて怒りました。続いて新卒の3年目の子が辞めたいと言ってきて、「どうして相談しないの!」と怒りました。その子は「この会社に相談できる人なんていないですよ」と答えました。若い人を育てる余裕もなく、ただただ多くの仕事をこなす日々が続いていたのです。10日間で総勢12名のわが社は20代の社員を2人も失いました。
 同友会で先輩経営者にこのことを言うと、「会社の問題は社長の問題」と言われました。自分なりに考えました。
 社員の前では笑顔でいようとしました。採用や人事のことも相談するようにしました。
 すると社員から「落ち着かせてほしい。仕事もたくさんとらないでほしい」と言われ、そのようにしました。会社を変えるには自分が変わるしかない。赤字は覚悟です。
 当時は仕事を詰め込みすぎて、できる社員ができない社員を責めるような社風でした。それを変えたかったのです。
 そして、この年の11月位に仕事の目途が立たなくなり、社員に相談しました。ちょうど翌年3月に「笑っていいとも」が終了する時期で、誰かが「みんなで出たら?」と言い、笑いあいました。社風の変化を感じた瞬間です。
 そして2014年に入り、個人面談をしました。社員1人ひとりに感謝の気持ちを込めてお礼を言い、自分への指摘も聞きました。
 高卒で入社5年目の子は「この会社しか知りません。社長のやることが全てです」と言いました。採用するとは、その子が人生をかけている、その責任を負うことなのです。

●あり方を問う

 我流で経営計画を作成して、聞く耳を持っていなかった私ですが、経営労働委員会には、2011年より参加しています。指針セミナーのグループ長も3年連続で務めました。
 委員会では労使見解の勉強会も行いました。例えば文中に出てくる「企業の全機能をフルに発揮させて」とはどういう事か、時間をかけて討論するといった具合です。
 役員改選の時期が来て、経営労働委員長の打診がありました。実は求人委員長の話もあり、迷いましたが、同友会運動の根幹であることから、経営労働委員長を引き受けました。委員会活動を通じて、採用に向かう会社を増やしたいという気持ちもありました。
 経営労働委員会は、運営ではなく経営を見直す委員会です。そして売り方、顧客の増やし方など「やり方」を学ぶのではなく、経営の「あり方」を問うのが経営指針セミナーです。経営の「あり方」、つまり経営姿勢の確立が大切です。
 『労使見解』の前書きには「労使関係の創造的発展こそ企業成長の原動力」とあります。そして学ぶべき点の第1に、「経営者の経営姿勢の確立」があげられています。これには謙虚に学ぶ姿勢とぶれない経営理念が必要です。私は宮城同友会の「創る会」の視察で「真の謙虚さこそ、最も貪欲に問題の本質に迫る態度である」ことを知りました。

●3つの変化と10年ビジョン

 2016年に向けて、社内でヒアリングしたところ、経営理念の2番目はみんな好きだから変えないでほしいと言われました。一方で社員も説明できるものをとも言われ、経営理念を一部変更しました。
 採用活動を続けることで、社員数5名から17名へ増えました。そのうち8名が新卒採用になり、会社の変化を感じています。社内で育つモデルができて、辞めずに続ければ育つことが分かり、社内も優しくなりました。外注の圧縮もでき、チームでの成果が出てきました。社内には3つの課がありますが、横の風通しが良く、他の現場を助けるようになったのが大きいです。
 2016年になってから3つの変化がありました。1つは退職希望の社員を先輩社員が慰留したのです。「もう少しで社長の前で残るって言いそうですから、待ってください」と先輩社員が言うのです。
 2つめは近くに住む高校3年生の子が「若い人が多くて楽しそう」と入社を希望してくれました。実は試験結果は過去最低でしたが、何とかなるだろうと採用しました。
 3つめは、お客様の子供さん(高3)が入社を希望。面接で「父が勧めるので」という彼の話をよく聞くと、お父さんの勤務先がお客様!どれもうれしい出来事でした。
 また、皆さんも取り組まれていると思いますが、企業変革支援プログラムを全社員で取り組んでいます。見えないものを数値化し、社長の主観的評価と社員の客観的評価を照らし合わせることができます。パートさんにも「うちの会社にはしくみがないから3にいくのは無理ですね」と言われ、効用も出ています。
 経営指針の新たな要素として追加された「10年ビジョン」を自社でも作成しました。
 高卒の社員は10年後でも28歳。社員数やお客様からの支持など描きました。ひとつの夢として「地域からの認知度が高く、小学校の教科書に吉田電工が紹介されている」という項目を入れました。自分達の会社が地域の小学校の教科書に載っていたらすごいと思いませんか?
 こんなことを考えるようになったのも、先輩経営者のおかげです。委員長としては、さらに経営を学ぶ委員会活動を進め、受け入れ体制の充実、グループ長の育成、4委員会の連携を進めていきたいです。
 経営者としては、手法でなく、あり方を学び、自ら変わること。あり方の深堀は経営理念であり、経営理念を深く考えるのが経営指針であること。その窓口は地区会や支部の活動にあることをまとめとさせていただきます。ありがとうございました。