第8分科会 「ブランド化」に取り組み「選ばれる企業」をつくる ~高付加価値化の道を楽しく実践~
私が本日ここで報告することは、昨年経営フオーラムに参加して良かったと思ったことをすぐに実践した結果です。
できれば、皆さんも今日、何か刺激になることがあれば、持ち帰ってすぐに実践してください。来年この分科会の参加者の誰かがここでその成果を報告してくれることが、この分科会の成功と言えると思います。
はじめに~自社紹介
㈱内海機械は急なお困り事に、「ぶっちぎりの早さ」で対応する会社です。ただ「ぶっちぎりの早さ」だけではない、その根拠となる様々な魅力も今日はご紹介したいと思います。
自社はもともと祖父が始めた織機メーカーだったのですが、父の代になり、木工機メーカーになり、1992年に工作機械の単品加工を始めました。時代としては量産品がもてはやされていたのですが、何せうちは後発なので、同じことをしてもお客さまに選ばれないということで、単品加工に踏み切りました。
社長就任から取り組んだこと~会社らしい会社に
私が社長を引き継いだときは、いわゆる町工場経営で、汚い、納期は遅れる、不良品は出す、というような状況でした。それはそれで成り立っていましたが、2~30年先を考えると、それでは、やっていけないと感じ、最低レベルからの脱却を図りました。
「汚い、納期遅れ、不良が多い」の真逆をいこう(マネジメントをしっかりやる)と、当時流行っていたISOの内部品質監査員の資格を社員全員で勉強しました。そうすると、不思議なもので、なんとなく会社らしい会社になってきました。服装もきちんとしてくる、あいさつもきちんとする、など良い影響が見え始めたのです。見える部分をきちんとすることで会社の印象はガラッと変わります。だまされたと思って皆さんも試してみてください。
また、生き残るためには何か強みがないと、と考えたときに中小零細企業が全ての分野において「ぶっちぎろう」と思ってもなかなかできません。そこで、とにかくニッチな分野を攻めよう、自分で戦える土俵をつくろうと考えた結果が、他所の嫌がる「単品」「短納期」という分野でした。
もちろん、基本は品質(が良いこと)が大事なのですが、それは他所もウリにしているので、アピール度は少ない。ならば、内海機械にとって大事なことは?と考えたとき、短納期=内海機械というイメージを確立することが非常に大事だと考えました。この業界では2番目に声がかかるようでは仕事はありません。何が何でもファーストコールをもらう、これが大事です。
同友会を活用~ブランド確立への取り組み
同友会に入会したのは、成長期を脱して次のステージを模索していたときでした。経営フオーラムで企業変革支援PGSTEP2を知り、すぐに実践しました。また、その半年後、県総会で広島信用金庫さんと分科会のグループ討論でご一緒したのをきっかけに、現場改善活動である、TPM活動を始めました。労力はかかりますが、目に見えて改善につながるので、楽しく取り組めました。具体的な取り組みとしては、事業推進内容としては工場のショールーム化(5S・3定・見える化・からくり改善・16大ロスの徹底化した取り組み)です。これらは社員も日常業務をしながらなので、取り組みの内容自体は簡単ですが、模倣は困難であると考えています。
また、同時期に同友会の丸山セミナーを受講し、SWOT分析により、ブランドイメージをより強く意識するようになりました。その後、丸山セミナーで勉強していたおかげで、経営革新計画、経営力向上計画の承認もスムーズに受けることができました。
また、大きな転機は昨年の経営フオーラムでブランディングの成功事例に触れたことです。熊野筆の会社なのですが、商品の魅せ方、マスコミ・行政との連携の仕方等、全てにおいて見事でした。大変に刺激を受けた私は帰ってすぐに自社のHP・ロゴ・名刺・封筒印刷を発注しました。これらは同友会の仲間にお願いしました。自分や自社のことを良く知ってくれているので、頼んだことに+アルファのことをやってくれます。
具体的には、堅かった会社のロゴをアルファベットにしたり(おしゃれっぽくしてくれと頼みました(笑))、名刺も一目で強みがわかるものにしました。
今年の四月から工場は一般にも見学を解放しています。会社をうちだけの財産ではなく、地域の財産と捉えています。今日参加された方もぜひ見学にいらしてください。
このように振り返ってみると、きっかけは同友会であることが多いとわかりますね(笑)。同友会では目の前のその人が良いヒントやチャンスをくれるかもしれないというおもしろさがあります。グループ討論を充実させて、同友会での出会いをぜひ大切にしてください。
また、自社と取引した企業にはモノだけではなく、コト(情報とシステム)もセットに(無料提供)するということもしています。例えば、工場の改善活動や採用活動について知りたい企業には情報提供をしています。
社員と会社がシンクロすることが大事
以上のようなブランディング化には社員一丸となって取り組んでいます。そのためにはビジョンの共有と考え方をしっかり統一して実行することが必要です。しっかりとした事業計画が必要なことはもちろん、会社の経営理念や事業計画について、理解できる社員を育てることも大事です。人を育てることに力を入れているため、自社は4大の新卒採用にこだわっています。
今年の採用は成功し、来年五人入社します。自社は府中にある、あまり大きくない会社です。しかし、学生はやはり、最初はイメージから入ります。合同企業説明会でもなるべく、イメージややりがいを伝えるようにしています。もし、採用にお困りの企業があれば、会社の見せ方を変えるだけで、全然結果が違ってくると思います。
また、自社では何事も楽しんですぐに実行する、をモットーにしています。事業計画などにも社員の個々人の目標を入れるようにしています。目標には日付も入れてもらい、月に一度の月例会議などで結果の報告してもらいます。その時点では目標を達成しているかどうかは重要ではありません。目標に対する現状を認識してもらい、次はどうするかを考え、皆の前で発表してもらいます。とにかくPDCAをまわす、このことにつきると思います。成果が出れば、楽しい→またやるという良いサイクルが生まれます。
これから
これからの会社は顧客や社員重視はもちろんのこと、社会との調和も考えなくては生き残る事はできないと考えています。社会に有益なことをしなければ、会社も発展しません。顧客本位・独自能力(強み)・社員重視・社会との調和、この4つのバランスが取れてこそ、社会から必要とされる会社となることができると思います。
今後の内海機械としての目標は10年後には日本経営品質賞をとること、中四国で単品・超短納期NO.1になることです。
それと同時に社員には、今ある仕事がいつまでもあるとは限らないという話をしています。AI・電気自動車等新しい技術が登場する中、今ある業界が崩壊すれば、まだ想像もできない新分野へ業種転換する可能性については常に意識をしています。
時代の流れがますます速くなる中で選ばれ、生き抜き、発展し続ける企業になるためには、「この会社でなければ」という「ブランド化」が必要であること、すなわち、付加価値を高めることはもはや中小企業にとっては、必須ではないでしょうか。
何かをやろうとすれば色々な抵抗があるかもしれません。しかし、成功のイメージをしっかり持ってすれば必ずできます。歴史は自分でつくれるということを断言して終わりたいと思います。