役員研修大学 第4講 経営指針を成文化し実践しよう! 報告者 香川県ケアマネジメントセンター㈱ 代表取締役 林 哲也 氏 (香川同友会 副代表理事・中同協経営労働委員長)
■3つの教訓
私は大学卒業後に会社勤めをしていました。そこでは雇用契約にない就労をさせられ、給料の欠配を経験し、あげくの果てに上司に仕事の失敗を押し付けられ解雇されました。また、再就職した会計事務所の所長から「おまえらは消耗品」と言われたことが強く印象に残っています。
この就業体験から、会社を立ち上げるとき、①給料は絶対払う、②人を「消耗品」と言わない、③責任転嫁しない、の3つのことを決心しました。
■経営の変革は、同友会での学びと不離一体
創業間もないころ、自社では売り上げが急上昇し、比例するように残業時間も伸びていました。そこで、残業の原因を断っていきました。PCの電源を強制的に切る、残業内容の監視、全社残業発表、ストレスチェック、面接。おかげで現在では、残業が理由の退職はありません。
また、職場の人間関係の正常化を図るために、お局・小局・黒幕問題を取り上げ、経営指針書にも禁止宣言を載せました。
全社面談もしており、その際には社員に10年後のビジョンを考えてもらいます。
このように、経営指針書を軸にしながら、中同協の打ち出してくる課題への取り組みを自社で応用して色々な取り組みが生まれてきました。
■指針実践の壁はどこにあるのか
①指針に綺麗事しか記載していない問題
指針に綺麗事しか記載していないと、社員に「もっと自分たちを働かせるために作った」と思われます。本当にすべき生々しいことが課題として組み込まれていることが必要なのです。
②「働く環境」と労使の「信頼関係」の問題
働く環境と経営の問題を全くの別物と考えている人は多いですが、実は就業規則を整備している企業ほど、売り上げも伸びています。だからこそ、労働環境改善と業績を直結させて考え、社員と話し合うことが必要になるのです。
③経営姿勢の確立の問題
あなたの会社の就業規則に、賞与は「業績によっては支給しないことがある」と定めていませんか?それでは経営の結果のしわよせが社員に来ていることになります。経営者は売り上げのビジョンだけではなく、労働環境のビジョンも持つべきです。
④成文化の過程の問題
「経営指針を創る会」では、財務や人事労務のことなど、専門家に頼ることなく、経営者自身が学び、助言しあい「新しい労使関係の創造」を目指す関係づくりが大切です。
⑤「給与はコスト」の呪縛からの解放
給与はコストと考えている人がほとんどでしょう。コストは安いほど良い。では給与は安いほうがいいのか?人件費は他の費用支出とは異なる「人」が生きるための尊厳のある支出です。
■よりよい社会のために
世の中で働き方改革と騒がれているずっと前から、「労使見解」では、①労使が対等な立場であることを前提に、給与等の労働条件は、明確にできるものは規定化すること。②結果としての労働環境ではなく、経営指針に基づいた労働環境を追求すること。③相互に認め合い、理解しあって協力する「社員をパートナー」とした「新しい労使関係」の実現を目指すことが掲げられてきました。
これらの実現のために、労使の信頼関係をより良いものにして、経営指針を成文化し、実践していきましょう。