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2017.11.07

役員研修大学 第3講 労使見解の意義と自社での実践

■思わぬ労働組合結成
 私は昭和28年に高校を卒業してすぐに母親の営む石炭屋で働き始めました。それからガスやリフォーム、メンテサービスなど、様々な分野に手を出していきました。
 多角経営をしていくと、空調、電気、何でもできる人が必要でしたから、社員に様々な資格を取らせました。普通は2つ3つ免許があれば事務所を開けるのに、全社で50も持っている。多能工化することで、例えば誰が電話に出ても、何でも対応できるようになりました。
 日々の仕事の上にライオンズ幹事や、PTA会長など忙しくしており、社員とのコミュニケーションもうすくなっていると思っていた矢先に、労働組合がつくられ、要求書を突き付けられました。
 
■「労使見解」との出会い
 労組をつくられて途方に暮れていた時に、1年前に同友会に入ったことを思い出し、事務局に相談に行きました。そのとき渡してくれたのが「労使見解」です。
 「労使見解」を読んで、自分は社員を大事にしている、民主的だと思っていたが、本当の意味で労使が対等だとは思っていなかったと気が付きました。
 労使の信頼関係を構築していくためには、社員を経費として見るのではなく、経営のパートナーとして見なければいけません。また、会社の利益がどう使われているのか明確にし、就業規則を整えるなど、社員と真摯に向き合わなければならないと思いました。
 
■人間尊重の経営のために
 同友会が推し進めている「人間尊重の経営」を進めるために、社員を巻き込んで就業規則をつくり直しました。賃金規定、評価制度、経営指針づくり、経理の公開、社員教育、etc.制度を整えることで社員が安心して働ける環境をつくっていきました。
 同友会に入っていなかったら、労組をつくられてわずか半年で就業規則を作るなんてことはしなかったでしょう。
 経営者はどんなことがあっても社員を守っていかなければならないということにも気付いていなかったでしょう。
 


■社員に目標をもってもらう
 自社では6か月先行管理を徹底しています。そして、年3回中2回の賞与は半年先の粗利予想から計算して出しているのです。このようなことをする理由は、社員に目標を持ってもらうためです。目標をもってもらうことで自ら考えて行動する自主創造型社員を育てます。
 そのおかげか、社内では社員による自主的な集まりがあり、社内研究会やロールプレイングなど熱心に勉強する姿も見られます。
 
■社員の感情を理解する
 経営者とは、社員のものの考え方や感情を理解しないといけません。
 ある会計事務所の先生に、100万円以上給料を取ると、累進課税のために納める税金が増えるから、その分を奥さんの給料にすれば会社の支出は同じでも三宅さんの家に入るお金は多くなりますよと言われたことがあります。しかし、その提案は断りました。社長の給料を下げた分だけあまり仕事をしない妻の給料を上げるという事態が起きた場合、社員の感情がそれを許すでしょうか。
 人は理屈では動きません。感情によって人は動くのです。これは労使関係が重視される中小企業にとって大切なことです。
 
■労使の信頼関係のために
 経営者はどういう姿勢でいればいいのかを考えたとき、私は謙虚に生きる、質素倹約、公私混同はしない、といったことを心がけています。
 また、社員の意思統一も大事ですがそれにも増して社員の感情統一が必要です。先に述べたように現代社会において、リーダーとは感情を統制することができなければいけません。社員の考え方や感情を理解することで労使の信頼関係は高まっていくと私は思っています。