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2017.11.06

福山支部経営労働委員会勉強会報告要旨 わが社の10年ビジョンと実践

 我社は昭和21年に祖父が創業しました。私は3代目になります。大学を卒業後、2年ほどして、父の経営する会社に呼び戻されました。
 当時の我社は、いわゆる町工場で、そこらじゅう油まみれの状態でした。そこから取り組みやすいところから少しずつ改善を進め、現在に至ります。
 
■歯車屋から総合エンジニアリング企業に
 同友会に入会し、丸山先生の指針セミナーに出て、「あなたは何業ですか」と問われました。何気なく、「あえて言えば『歯車製造業』です」と答えると、「ふーん、歯車屋さんなのね」と言われました。その時にはカチンときたのですが、セミナーから帰るときには、「いや、『総合エンジニアリング業』で行こう」と思いました。つまり自社のドメイン(事業領域)を決めたわけで、これが方針やビジョンの基本となったのです。
 
■祖父のつぶやき「メーカーになりたい」
 では、それ以前の我社に方針がなかったかと言うと、決してそうではなかったと思います。祖父は時折、「やっぱり、いつかはメーカーになりたい」とつぶやいていたものです。その方向は父も願っていたと思います。
 祖父は歯車の目立て(円形の金属に歯車の歯を刻む)をしていました。父の代になって、歯車を製品として納めるようになりました。私はアセンブリー(周辺の軸受けや歯車を組み込んでユニット化して納品)、図面作成、スペックによるオーダー受注と進め、現在は「広精」のタグをつけたギヤボックスを市場に出せるようになりました。今後はカタログ受注ができるようにしていくのが目標です。まさに祖父のつぶやきが、我社の方向性だったのです。
 
■ビジョンとは何か
 私は、ビジョンと言うのは、何年か先のありたい姿、だと思います。ある意味、多少の誇張があっても良いのではないでしょうか。大事なのは、それに向かう方針です。
 というのは、私が目標管理より、方針管理を大事にしてきたからです。目標と言うのはしばしば狂うものです。それよりも、会社があるべき方向に向かう、そのための道筋から外れていないか、を確認する方が大事だと考えているからです。
 
■ビジョンが方向性を決める
 ご縁があって訪問した愛知県のA社は、かつて「トヨタと共に…」というビジョンを掲げていましたが、その後、「世界のA社に…」と表現を変えました。それと共に戦略展開が変わり、大きく成長を遂げました。これを見ていて、自社にもそうしたスローガンが大事だと痛感しました。
 そこで平成八年に初の10年ビジョンである「TA(トータルアクション)2010」を発表しました。方向性が明確になることで、取り組みの意味が明らかになり、方針の浸透が進みやすくなりました。現在は「TA2020」の最終段階に来ています。このビジョンも進行具合で、毎年少しずつ見直しをしています。


 
■方針を具体化する「企業変革支援プログラム」
 その方針の具現化を助けるツールが「企業変革支援プログラム」です。
 実は幹部社員と一緒にこれをしたら、自己チェックが社員の採点より1~2点高かったのです。つまり経営者の「これだけ出来ている」という思い込みが強かったのですね。
 摺合せをして正しい姿をつかみ、ステップ2のヒントを活かして、会社の改善策を指針に書き込んで、具体的に進めています。経営指針と企業変革支援プログラムはこうしてつながるのです。皆さんも大いにご活用いただきたいと思います。
 
■同友会のせいで(おかげで)
 私は叱咤激励したり、無理をしたりするのが苦手です。だから、できそうなことを、具体的に取り組むようにしてきました。同友会で学んだ事を、少しずつ愚直に積み上げてきたと思います。だから多くの方が「同友会のおかげで」というところを、「同友会のせいでこんな会社になった」と言っています(笑)。企業革新はまだ道半ばですが、少しずつ前進していると思います。