役員研修大学 第二講 同友会の歴史
■「自主」を重んじる同友会
同友会の3つの目的には、共通するキーワードがあります。それは、「自主」という言葉です。なぜ自主にこだわるのでしょうか。
戦後間もなく、財閥が解体された日本では、中小企業が生産流通など広い分野を担っていました。ところが1年後、戦後統制で政府による大企業へのテコ入れがあり、中小企業は苦境に追い込まれていきます。
そこに全日本中小工業協議会(全中協)が誕生しました。全中協は、中小企業は日本経済の中核的存在であるという使命感を持ち活動を展開していきました。
その後、日本中小企業政治連盟(中政連)ができました。中政連は政治の力で過当競争を抑え、中小企業を支援すると謳いました。それに対して、政治に頼っては中小企業は元気にならないと一部の全中協メンバーが反発して誕生したのが日本中小企業家同友会です。
同友会誕生の背景には、自主へのこだわりがありました。自主的な努力が報われるような社会をつくらなければいけない。日本経済の自主的・平和的発展を目指すという大きな流れは今も続いています。
■同友会理念の確立
1957年に日本中小企業家同友会はできました。それ以降、各地に同友会ができていきます。
実はその当時、同友会には理念がまだありませんでした。1973年。広島同友会創立と同じ年に、同友会3つの目的が成文化されます。
のちに「国民や地域とともに歩む中小企業」、「自主・民主・連帯の精神」と理念が確立されていきました。これらの理念は、同友会の様々な運動のプロセスのもとにできあがっています。
■労使見解
同友会が発足したころ、苛烈な労働運動が展開されていました。それは中小企業も例外ではありません。中小企業の労使関係はどうあるべきか10数年にわたり議論され、「中小企業における労使関係の見解」(労使見解)がつくられました。これをもとに経営指針成文化運動が展開されていきます。
■21世紀型企業づくり
バブルがはじけ、これからどのような企業づくりをすべきかが問われていく中で、1993年の中同協総会宣言に「21世紀型企業づくり」という課題が提起されました。内容は、①自社の存在意義を改めて問い直し、国民や地域の期待にこたえられる企業、②社員の自主性が発揮できる理念が確立され、労使が共に育つ活力ある人間集団としての企業を目指そうというものでした。
■良い経営環境への道
90年代に金融機関による貸し渋り・貸し剥がしが横行しました。金融機関には地域貢献の役割があるはずなのに、中小企業に厳しいのは問題だとして同友会は金融アセスメント法制定運動を展開しました。これにより、金融機関の中小企業への対応は変わりました。この出来事の成果が、中小企業憲章制定運動への流れに続きます。
2010年に閣議決定された中小企業憲章には、「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役である」とあります。日本において中小企業を柱に据えた政策を打ち出すために、理念を構築しようと中同協で2003年に学習運動が呼びかけられ、制定運動に発展し、結実したものです。
■地元に根付く中小企業
地域を活性化するために各同友会では中小企業振興基本条例制定運動を進めています。現在43の道府県と227の市区町に条例があります。
中小企業の発展に力を入れないと、地域は疲弊します。その象徴的な出来事に、東日本大震災があります。震災後、復旧や復興に尽力し、雇用を守ってその地域に残った企業は経営指針をつくり、社員とともに歩んできた中小企業でした。地域を支えているのは中小企業なのです。
■歴史に学び未来をつくる
同友会運動は生き物で、運動そのものが変化していきます。国際的に見ても前例のない運動ですので、運動を担う役員や事務局の皆さんは時代をつくる主体者でもあります。時には壁にぶつかることもあるでしょう。迷ったら歴史をひも解き、先人のエネルギーに学び、運動を推進していきましょう。