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2017.08.12

中小企業憲章 閣議決定7周年記念行事 「中小企業が主役の地域経済をめざして  ~中小企業憲章 閣議決定の経過とその意義」

 三井逸友先生

 「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役である」とした中小企業憲章が閣議決定されて七年、広島同友会は、6月21日、7周年記念行事を開催しました。同友会をはじめ中小企業団体や金融機関、行政関係者など67名が参加し、三井逸友先生のお話をもとに元気な地域経済をどうつくるかを議論しました。三井先生のお話のあらすじを紹介します。
 
■「中小企業政策」とは?

 この20年で、中小企業に対する認識が大きく変わりました。以前は、中小企業と言えば「苦労」「大変」というイメージばかりでしたが、今や世界中で、中小企業の可能性を引き出そうとすると同時に、中小企業の抱える問題を解決していこうという流れになっています。
 2000年にはEUで「ヨーロッパ小企業憲章」が制定されました。これは「中小企業憲章」のルーツといえるものです。
 
■「中小企業観」と世界的論調
 
 では、こうした考えにはどういったものがあるのか?
 「地域イノベーションシステム」という理論は、地域発展における中小企業の必要性について説き、地域の中で学びながら新しいものをつくりだす「学習地域」を強く意識しています。これは同友会に当てはまることですね。
 ほかにも経営者の自ら責任をもって行動する点を評価した「企業家論」、同友会のように顧客、地域、住民とともに歩んでいこうということが論じられている「CSV論」などがあります。
 以上のように、中小企業の存在の可能性、多様性をどう生かすかということに世の中の関心が集まっており、それをどう理論化するか、どう政策に生かすかという流れができています。
 
■日本中小企業政策の転換
 
 中企業政策のはじまりは1884年、輸出の奨励と組織化をはかった「同業組合準則」です。このことは明治時代から、日本は中小企業の力で生きてきたということを証明しています。
 戦後は「中小企業庁設置法」「中小企業基本法」など、近代化政策が推し進められました。ところが1999年に中小企業基本法の全面改定という大きな転換をむかえます。改訂前は企業間の生産性、賃金格差の是正が目的でしたが、改正後は多様で独立した中小企業を支援するものになりました。要するに、もう近代化はしなくてもいいというものです。
 しかし新基本法下の2000年代に中小企業は衰退の傾向となります。
 
■2010年日本版「中小企業憲章」への道
 
 中小企業衰退という事態に強い危機感をもち、これを何とかしようとして中小企業憲章制定の動きが始まりました。同友会が全国で「日本版EU小企業憲章をつくろう!」と呼びかけたおかげで政治にも影響を与え、いろいろな政党が憲章制定に賛同したのです。2009年の総選挙の際には、民主党のマニフェストに憲章制定が掲げられました。

 そして2010年、中小企業憲章は閣議決定されます。中小企業にかかわることを省庁の壁を越え、政府一体、国民経済全体として取り組もうということになりました。
 
■「中小企業憲章」以後の中小企業政策
 
 憲章の閣議決定前にできた政策が、中小企業金融円滑化法です。金融は企業の死活にかかわるもので、より積極的に中小企業の立場に配慮した政策が何よりも必要だということを現実化したものでした。
 また、小規模企業活性化法や小規模企業振興基本法など、中小企業一般と小規模企業を区別した政策もできました。社会的意味、経済的立場、それに対する政策のあり方の違いを理解し、それをどう今後の中小企業政策に生かしていくかが重要になっているのです。
 
■いま、「中小企業憲章」をあらためて考える
 
 憲章の閣議決定から7年が経ちました。基本法と憲章の関係にはいまだ問題が残っています。しかし中小企業庁では憲章を重要な手掛かりとして憲章に即した政策を実行するなど、多大な影響を与えています。また、同友会やその他の中小企業団体が協力していく機運にもつながりました。
 地方では、憲章をどう生かしていくかということで、「中小企業振興条例」が多くの都市で誕生しています。憲章と条例の両輪により、社会全体に新しい風を吹かせ、中小企業の可能性を積極的に生かすことができます。

 憲章はつくったらおしまいではありません。憲章にあることを、どこまで何をやったのか。憲章の検証がこれから必要になっていくのです。
 
■学習型地域づくりを
 
 三井先生のお話のあと、「中小企業が主役の地域経済をどうつくるか」をグループ討論しました。「地域で企業を知る取り組みが大切」、「地元が好きな人を増やそう」、「雇用を生む中小企業の役割の発信」、「地域の関係者のコミュニケーションを豊かにしていく」、「隠れた魅力ある企業の紹介」、「多様性が地域を元気にする。行政は企業の現場に出向く」などの意見が寄せられました。
 最後に「今日の皆さん方のように、企業経営者だけでなく行政や金融機関、商工団体の方々など、自ら学ぼうとする人たちが増えていけば日本は活力あふれる国になります。次の世代をどう育てていくのかが討論の主題になったようですが、今、地域を知る仕組みが不足しています。企業、行政、学校、金融機関が一体となって、中小企業の地域に果たす役割を発信していくことが大切です。中小企業憲章のめざす1つは学習型地域づくりです」と三井先生はよびかけました。