同友会運動と自社の経営は不離一体 ~同友会の学びをどの様に自社で実践したか~
■人を見る目を養う
私が同友会に入ったのは、会社の創業10年目に労組ができたことがきっかけです。社員は「この会社の10年後の賃金体系がわからない」と言いました。中小企業の行く先なんて社長の頭の中にだけあるものでしたが、そうも言っていられなくなりました。私は社長とともに東京でコンサルタントのところで勉強しました。
勉強をしていくにつれ、もっと経営の勉強をしたいと思うようになり、同友会に入りました。これが1980年のことです。私の人生を変えることになりました。同友会に入ったおかげで、いろんな経営者に会うようになり、経営者を見る目を養いました。2割は素晴らしい経営者。6割は悪戦苦闘している。残り2割は反面教師。この2割の人を見る目を養ったのです。
■先輩の助言に救われる
同友会のおかげで助かったことはたくさんあります。会社というのは課題だらけです。そんな課題を解決するにはどうすればいいのか。同友会の先輩会員は「困ったことがあれば、経験豊富な会員のところへ飛び込め」と言いました。
私がまだ会社のナンバーツーだったころ、社長が海外進出を考えていたことがあります。このときも私は同友会の先輩に相談しました。「トップが海外に行くなら、お前は国内に残って会社を守れ」とアドバイスを受けました。結果、社長は海外で痛い目を見ましたが、会社は生き残ることができました。このように、私が危機を切り抜けてこれたのは、同友会の先輩のおかげなのです。
■自主性を重んじる
同友会の理念には、「自主・民主・連帯の精神」があります。我が社では社員の自主性を重んじています。社内に委員会をつくって、社員が意見を言う場を作りました。そこでは社名変更の話も出てきました。そしてつけられた社名が「エステム」です。
同友会のつながりで、他社の子会社を見てくれないかと言われたときも、うちの役員から「私がやります」と言った者にやらせました。言われてやるのではなく、自分から言うくらいの勢いがなければいけません。
トップの重要な仕事は先行投資をどれだけ覚悟してやるかです。営業や人の採用は社員にでもできます。しかしこれだけはトップでなければできません。同友会で学びながら、自分でその時の課題に果敢に挑戦する。これが自主性です。しかも独断ではなく、人に聞いてください。その上で決める。つまりトップの仕事は決めることであると言えます。知識と経験があれば、判断はできます。でも決断には勇気が必要です。だからこそ、社長の仕事なのです。
こういったことを同友会で学んで、自分の会社でやっています。
■経営指針を社風にする
同友会では経営指針をつくろうと言っています。つくってそのまま引き出しに仕舞いこんで、忘れてはいませんか?社長がそんなことでは、社員もそうします。社員は社長の言うことやることをよく見ているのですから。だから自社では幹部会などで必ず持ってこさせます。指針を持ち歩かせ、読み合わせもします。身につくように、会社の社風になるように、繰り返し繰り返しやっていくのです。
■学習型企業へ
自社で実践したことには、学習型企業への転換もあります。エステムは創業10年時点では職人集団で、仕事が終われば社長も社員も麻雀をしているような会社でした。しかし同友会で大学の先生の話を聞く機会があり、「21世紀には、学ばない企業はつぶれるぞ」と言われました。
それからうちでは社員にいろんな資格を取るように押し進めました。何をどのくらいやるかはその人次第です。私は社員に「自分の翼を鍛えて、飛んでいけ!」と言います。すると本当に社員は飛んでいってしまう。うちから有名な大企業に転職した人も出てくるほどです。しかしそれは悪いことではありません。うちを辞めた人は、再就職した会社からうちへ仕事を流してくれるようになったのですから。
最後になりますが、皆さんには私がしたように、同友会で学んだことを自分の会社でやってみて、その顛末を同友会で報告して「あ、そうだったのか」という気づきを得てほしいと思います。