経営環境アンケート調査2016~経営状況は改善するも業種で大きな開き
政策委員会(佐藤清子委員長)は、10月12日から3週間、毎年恒例のアンケート調査を実施しました。447人の会員の皆さん、ご協力をいただき、有難うございました。概要を紹介します。
(※DI=傾向をみるための数値。DIが100に近づくほど良い(上昇)、-100に近づくほど悪い(下落)ことを意味する)
卸・小売りの経営状況が厳しい
個人消費の伸び悩みやEUや中国経済の減速などの逆風もありますが、原油安や円高などの影響もあり、中小企業の景況は改善傾向を続けています。今回の調査で、経営状況DI(※)は平均+15で、10ポイント上昇した昨年に比べさらに3ポイント改善しました。改善の傾向は建設関連が+28と最も高く、サービス業+19、製造業+14と続きましたが、卸・小売業は-16を示し、業種で格差が広がっていることが分かりました。利益面では、51%の企業が黒字、18%の企業が赤字と答えました。
経営上の一番の問題は「従業員の不足」
経営上の問題点のトップは昨年に続き「従業員の不足」(43%)で、昨年からさらに4ポイント増えました。寄せられたコメントには、「若い社員が退職し、このままでは後に続かない」、「人がいないから店舗を閉めるという悪循環」、「大型店の出店で時給が大幅に上がり、ますます採用が困難になりそう」など、厳しい声が寄せられました。
経営上の力点のトップは「付加価値の増大」
52%の会員が「付加価値の増大」を経営上の力点にあげ、三年前からもっとも高くなっています。逆に減っているのが「新規受注(顧客)の確保」。七年前とくらべ、20ポイントも減り43%になりました。新しい顧客を増やすよりも、今の顧客に深く対応し、生産性を上げようとの思いがうかがわれます。
「新規事業の展開」は力点の5番目(22%)にあげられました。「M&Aによる異業種参入」といった思い切った事例もありましたが、「現在の仕事をベースに付加価値をつけたサービス」や「既存顧客に対しての本業以外の仕事の提案」など、今やっている仕事の範囲を深めたり、広げたりされようとしています。環境や介護、農業関連などへの展開も目につきました。
来春の賃上げを決めているのは42%
「今春賃上げをした」と答えたのは60%、「来春は賃上げする」としたのは42%で、「来春はわからない」と答えたのは31%でした。
今年も来年も上げるという方は、「社員のモチベーションアップのため」、「社員の生活を守るため」、「人材確保のため」と答えています。賃上げしない(わからない)という方は、「公共工事の単価が変わらないから」、「能力に応じた賃金だから」などのコメントが寄せられました。
また、「最低賃金の改定で、パート・アルバイトは値上げせざるを得ないが、その分、正社員の給与引き上げが難しくなっている」という声もありました。
賃上げは、アベノミクス前進の一つとして政府も重要視していますが、問題は受発注の関係で、発注企業が人件費を含めたコスト削減を進めていることです。中小企業庁によれば、下請け企業にとって、原材料費の上昇は価格転嫁しやすいけれども、賃金上昇は価格転嫁しにくい状況があるとのことで、受発注の公正な市場環境の整備が求められるところです。