【同友ひろしま7月号】1.地域活性化の視点~「地域型」か、「地域版」か(高知短期大学 福田善乙氏)
中小企業憲章6周年記念行事
広島同友会は、中小企業憲章6周年記念行事を7月1日に開催しました。「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役である」とした中小企業憲章の意義を地域に広げていくことがねらいです。同友会の役員が30名、経産局や県、市の職員の皆さん、大学の先生、マスコミや金融機関の方々が38名、あわせて68名が参加しました。
広島同友会から粟屋代表理事、中国経産局から隅田産業部次長が挨拶し、高知短期大学の名誉教授の福田善乙氏が「地方創生と地域のあり方を考える~『地域型』か『地域版』か」のテーマで問題提起しました。お話の一部を紹介します。
地域際収支とは
2009年、高知県は産業振興計画を発表します。①人口減にどう立ち向かうか、②産業のあり方を考え、
国の政策と県の課題をどうとらえるのかというものでした。その根拠の一つが、私が地域経済分析の手法として展開した「地域際収支論」でした。「国際収支」は一般的に良く使われていますが、「国」を「地域」に置き換えたものです。105部門の産業別の収支、つまり県外に移輸出しているもの、県内に移輸入しているものの差額を示し、その県の強み、弱みをあぶり出そうとするものです。今、経産省が進めている「地域経済分析システム」(RESAS)はこの考え方が基本になっています。
2014年、国は東京への人口や富の一極集中を何とかしたい、地方の衰退を食い止めたいとの背景があり、地方創生政策を打ち出します。そして、地方版人口ビジョンと地方版総合戦略の策定を地方自治体に求めます。高知県は全国に先駆けて「高知県まち・ひと・しごと総合戦略」を策定しますが、それができたのも先の産業振興計画があったからです。
「地域型」か「地域版」か
国の政策は全体的な視野と総合的な視点でつくられ、豊富な情報量など、地方にとってプラスです。しかし、国の政策が立てられることで、地方はそれに依存したり、自分たちで考えようとしなくなったり、他者にまかせることが一般化するようになり、マイナスになる場合もあります。
したがって、地域はどうしていくのかを考える視点が必要で、私は「地域型」でいくのか、「地域版」でいくのかと投げかけています。
「地域型」とは、地域の人たちが地域の実態に基づき力を合わせ、地域の発展を考える政策をつくることです。自分から物事を考えていく、開いていく発想であり、地域の宝物を全面活用していく視点です。自主性・自発性・創造性・提案性が基本となります。
「地域版」とは、国からの政策や提案に依拠して地域発展の政策をつくることです。往々にして大都市からの発想であり、地域の宝物を部分活用したり、切り売りします。国からの例示や他の地域との類似性が中心の構成となり、画一性、一律性、模倣性、共通性、受身性となりがちです。
私は、国の論理と地域(地方)の論理は違うので、認め合うことが大切だと思います。つまり、「地域型」政策を基軸にすえて国の政策で活用するものは活用するのです。それには人材が必要です。あらゆる教育の場に地域の姿を示していくことが大切です。
平成の大合併の中で、合併しなかった町が元気です。徳島の上勝町、島根の海士町、高知の梼原町など、地域の宝物をみつけ、苦労を含めて学びながら自分たちの行く末を決めてきた町です。こうした町がこれからの地域のあるべき方向性を示しているように思います。
瀬島副代表理事は「『わが意を得たり』の勉強会になりました。同友会は自主・自立を旨としており、5年後、10年後、自分たちはどういう地域をつくっていくのかを常に考えようとしています。福田先生の提起された『地域型』は、その地域にどんな中小企業振興基本条例をつくるのかという問いかけだと思います。そのためにも地域経済の主人公たるわれわれの自覚が求められます」とまとめました。(文責 国広)