2.環境経営・エネルギーシフトって何?(中同協 池田泰秋氏)
~同友会がめざすもの~
講師:中同協事務局次長 池田 泰秋 氏
中同協が地球環境問題の交流会を提唱したのは2000年。翌2001年に、滋賀で第1回の中小企業地球環境問題交流会が開催されました。97年に京都議定書が採択され、地球環境問題が注目されていた時代です。他方でこのころEU小企業憲章が紹介され、欧州視察などを通じて、日本と欧州との差を強く感じました。
同友会は何をめざすのか
今取り組んでいる環境経営やエネルギーシフトでめざしているものは、同友会が提唱する様々な経営問題の総合実践、と言うことができると思います。
環境経営をしっかり進めようとすれば、経営指針書に環境理念を盛り込んだり、目標数字を盛り込んだり、全社一丸の取り組みを進める必要があります。エネルギーシフトは、「地消地産(地域で消費するものを地域で生産する)」の一環であり、中小企業振興基本条例づくりとも相まって、地域づくりの活動になります。
環境経営のメリット
環境経営とは、文字通り環境問題を経営に取り込むことです。
まずは、キックオフ。取り組みを全社的に共有することです。できれば、社内に担当者を置き、管理しましょう。そして成果を見える化することが大事です。実感がなければ、共有が難しいからです。社内に一人でも非協力的な方がいれば、成果は上がりにくいものです。その意味でも、全社一丸の体制をつくることが大事になります。
つまり、環境経営を行うことは、会社の中の理念や目標を共有でき、そのための組織づくりが進むとともに、全社一丸の体制作りにも役立ちます。
少し気を配り始めるだけで、コストが2~3割は削減できると言われています。それは会社の利益に直結します。利益率1%の会社で1万円のコストカットすることは、100万円の売上をつくることに等しいのです。
地域にお金と仕事を還流
実は地域から出ていくお金で最も大きいのがエネルギーコストなのです。広島県のコストは1兆円程度だと推測されますが、その7割が県外に出て行っていると思われます。その一部でもいいから、地域に還流させる。そのために、①徹底した省エネの推進、②熱利用など現在の廃棄エネルギーの活用、③再生可能エネルギーの促進で、エネルギーの「地消地産」を進めていこう、というのがエネルギーシフトの取り組みです。
無駄の多い現在のシステムを見直す
エネルギーシフトとは、①エネルギーそのものをシフトする、②大規模集中型から小規模分散型にする、と言うことです。
大規模発電では元のエネルギーの2~3割程度しか取り出せません。残りは熱として捨てられています。この熱エネルギーを暖房や給湯に活用するのです。
一方、建築物は徹底して断熱を行い、効率を良くします。風力や太陽光・太陽熱を徹底して利用する。こうした取り組みで発生する仕事は大手の苦手とするところで、中小企業振興に役立ちます。
欧州ではチェルノブイリ原発事故を期に自然エネルギーの活用が広がり、特にドイツやオーストリアではエネルギーシフトが進んでいます。ドイツ経済が非常に強い一因は、ここにあります。
地域と企業を見直す鍵
これらの考え方は、2011年の東日本大震災を機に広がりました。一極集中は効率は良いものの、現在頻発している自然災害を考えれば、脆弱そのものです。
企業にとっても、BCP(事業継続計画)などをつくり、自社の危機管理体制を強化することが求められます。
環境経営やエネルギーシフトは、今後の地域や企業を見直す大きなカギになると思います。(文責 事務局 橋本)