4.M&Aをしました~事業を発展させ、人が生きることが喜び(山本屋 山本浩矢氏)
㈱山本屋 代表取締役 山本浩矢氏(尾道支部)
M&Aをするようになったいきさつを教えてください。
出雲の㈲はら屋という和菓子屋を買い取りました。
元々はそういうつもりはなかったのですが、「スモールサン」という勉強会で、講師から声をかけられ、会社を見たりオーナーと面談をするうちに、だんだんその気になりました。
㈱山本屋の工場が3月と9月に稼働のピークがきてパンクしそうになるのですが、それを吸収できないか。
㈱山本屋は餅屋で、もち米のお菓子がメインですが、商品のバリエーションを広げられるのではないか。
出雲にあるという地名の価値を生かせるのではないか。
資金のことが心配でしたが、金融機関さんの相談したところ、前向きに応じてくれ、買い取りの交渉を進めることにしました。
はら屋は、大正時代から出雲駅前で営業してきた老舗の鯛焼き屋さんです。10年くらい前にブレイクした白い鯛焼きブームに乗って工場を建設しましたが、ブームが去り、2011年に破綻し、大阪の催事の会社に買いとられました。今回うちは㈲はら屋を大阪の会社から買い取りました。
買い取ったあとの運営は順調でしたか?
昨年の11月に引き継いだ時は黒字でした。この6月の決算でまだ赤字ですが、そろそろ黒字になる見込みです。
こんなはずじゃなかった!ということが、いくつかありました。(笑)
帳簿に載っていた在庫のうち、不良のものがけっこうありました。また家賃が、理解していた額より高かったとか。
とりあえず、㈲はら屋の賞品を㈱山本屋の販売ルートに乗せて売上を稼ごうと思っていたのですが、品質や包装の面で㈱山本屋の基準に合わず、実行までに半年かかりました。
㈲はら屋の鯛焼きやまんじゅうといった商品は小麦粉で作ります。㈱山本屋は餅屋なので、小麦粉の製品の経験がありません。それで、㈲はら屋の元々の経営者の方に顧問として残っていただいていたのですが、私どもと考え方や行動スタイルが合わず、話し合いの結果、退職されました。そこから、仕入れから製造まで、手探り状態になりました。原材料メーカーに協力をお願いし、なんとか製品ができるようになりました。
それから、パートさん7名を含む11名の社員さんを引き継いだのですが、長時間労働で休みなしという、非常に悪い労働環境下にありました。就業規則を整備し、改善しました。
M&Aをやって良かったですか?
はい。
㈱山本屋(餅)と㈲はら屋(焼き菓子)とで、棲み分けをしつつも、相互に補完して、製造能力のバランス取りや製品のグレードアップをはかっていこうと考えています。
みたらしだんごの設備を㈱山本屋から㈲はら屋に移設し、より高級化した商品を製造しようとしています。 ㈲はら屋が大阪の会社に買いとられた時に、催事とおみやげ用のお菓子という仕事が加わりました。これらを活かして発展させられないかと思っています。
小麦粉を原料とした焼き菓子の製造ノウハウを生かして、新しい商品を開発できる可能性があります。
なんといっても、少人数からスタートし、事業と組織を発展させるプロセスを体験できるというのは、経営者として醍醐味があります。
また、引き継いだ社員のみなさんが、不安な気持ちを抱えてこられたと思いますが、一所懸命やっている姿を見ると、自分もがんばらねばという気持ちになります。(取材・文 事務局 竹河内)