2.エネルギーシフトで新しい仕事づくり(加藤設計 加藤昌之氏)
ゼロエネルギーオフィスの事例から考える
6月2日、地域内連携推進委員会は愛知同友会の㈱加藤設計の代表取締役、加藤昌之氏を迎えて、勉強会を行いました。加藤設計さんは今年2月、サスティナブル建築賞(建築・環境省エネルギー機構)、審査員奨励賞を受賞されました。エネルギー収支がほぼゼロの建物をつくられたことが評価されたもので、省エネ・創エネ・低コストを実現しています。加藤社長のお話のポイントを紹介します。
真の「快適空間」の追求とエネルギーシフト
・わが社の経営理念は「あんしん安全快適満喫空間の創造」です。人間が豊かに暮らせる仕事をめざしています。
・「エネルギーシフト」とは、エネルギーそのものをシフトすることで、大規模集中型から小規模分散型への移行です。①省エネ、②コージェネレーションシステム、③再生可能エネルギーの利用が三本の柱です。
快適性の追求からゼロエネルギービルへ
・大手ハウスメーカーが進めるゼロエネルギービルは立派な設備を使いますので、コストが上昇、高くつきます。
・しかし、受賞したビルのお施主さんの要求は2つ。①ゼロエネルギー、②コストがアップしないことでした。そこで考えたのは、エアコンをやめることで、天井を省き、受電設備にお金をかけないようにし、その分、高気密化や高断熱化、再生エネルギーにお金をかけようとしました。
・北側の安定した採光を積極的に取り込み、南側の窓を少なくし、風は自然に出入りし、コストアップしないよう自動化をできるだけ避け、手動のローテクにこだわりました。
・結果として、省エネの外部評価は最高ランクをいただきました。
具体的にどんなことをしたか
・地下水を利用した全館空調で、エアコンを取りやめました。空調は下からやるのがいいということで、
床下に配管し、暖房にも冷房にも使い、湿度は加湿器により制御しました。結果として、電気総容量が低くなり、キュービクル不要でコストダウンしました。
・太陽光発電を活用し、電気料金の収支は、プラス55万円になりました。
・自然採光で昼間は照明を使わず、低照度LEDを使って照明器具を30%減らしました。必要なところに必要な明るさをという考え方で、これはスタバの店内の明るさを参考にしました。
・井戸水を使って水道料金をゼロにし、井戸水のわずかな温熱エネルギーも夏の空調に活用しました。
・「外断熱」で外気の負荷を減らしました。コンクリートにエネルギーを蓄えるということで、今までは捨てていたエネルギーを活用しました。
・木製のトリプルサッシやダブルスキン(外壁をガラスで覆う)を使うことで、熱の出入りをコントロールしました。
・人間の快適体感温度を考え、人間を快適にすることに徹し、それ以外の空間を省エネしました。働く場所を個人が選べるようにし、空調の吹き出しを個別に手動で開閉、不足する場合は扇風機などを活用、照明はダウンライトで机を照らし、不足は手元照明を使います。全自動は行わず、原始的な操作、働く人の感性に任せるようにしました。
エネルギーシフトの今後
・快適な生活ができる国は豊かな国だと思います。
・未来のために私たちがやらなければいけないことは、地産地消の循環型社会システムはもちろんですが、その先は健康快適で健康長寿の社会の実現です。建物もそのように進化していくでしょう。
・エネルギーは、ハイテク大量集中生産型からローテク少量分散型へ進み、人間性を尊重した社会へ進むことと思います。これがこれからの本質だと思います。
・したがって、私たちは環境経営を方針化し実践する必要があります。省エネ・小エネ・創エネを自社に取り込み、商品化するのです。
・そして、地域の仕事を生み、地域でお金が回ることなど、地域の元気を考えるのです。中小企業憲章が示す、仕事と暮らしが豊かになる、中小企業が生き生きと活躍できる国づくりを考えていきましょう。(文責 国広)