2.県総会・第1分科会「企業づくり」
「情勢をふまえ、人を生かす経営戦略」
問題提起者:旭調温工業㈱ 粟屋充博氏(代表理事)
●情勢と経営課題
今回の分科会は情勢と経営課題について県総会議案書をベースに問題提起をします。参加者の方にこれからの自社の発展と同友会の学びをどう活かすかについて話し合って頂きたいと思います。
世界情勢についても語ることは多いですが、今回は日本や広島の状況について話します。
日本は戦後70年を経て誰も経験したことのない時代へ突入しました。我社の場合、議案書より経営課題を挙げると、次の二点があります。
第一に「人材の確保と育成(技術の伝承・事業継承)」です。「働く人(若者)にとって魅力ある企業づくりが課題になります。
第二は「人口減少に伴う市場の縮小」です。新しい仕事づくり(新規事業の立ち上げ)について考えなくてはなりません。
広島県の人口は1998年の288万人をピークに2015年には282万人と6万人減少しました。まだ少しの減少ですが、このままでは40年には239万人、60年には190万人に人口減少が予測されています。県・市も若者の転入政策を考えていますが、我々も経営問題としての人口問題を考えなくてはならないと思います。
●昨今の会員の経営上の力点の変化
毎年行なっている「会員アンケート」で経営の力点の1位と2位が逆転しました。
2008年の調査で、1位は「新規受注(顧客)の確保」(55%)で2位は「付加価値の増大」(48%)でしたが、2014年にトップが入れ替わり、2015年は「付加価値の増大」(56%)、「新規受注(顧客)の確保」(48%)となりました。
新しい顧客の開拓は変わらない経営課題ですが、それにも増して現在の顧客のニーズにより深く対応、付加価値の高い仕事を追求し、値段を決められる力(価格決定力)を高めようという会員が増えているようです。
●当社の経営課題と課題に対する取り組み
当社はメーカーとして、冷風乾燥機の製造をしています。「事業の継承」と「技術の伝承」という点から、二つ経営課題があげられます。
一つ目は「人材の確保と育成」です。次世代への技術の伝承を目的に、採用(新卒・中途)活動への取り組みの強化をしています。同友会の共同求人や中国NBCの合同企業説明会へ出展、中途採用ではハローワークへ毎月求人情報を更新に行っています。これは応募が多数のため、日が経つと求人票が埋没してしまうので、月ごとに更新をかけています。
今年度から高校への学校訪問を開始しました。人材不足という点から、大卒だけでなく高校生の採用にも取り組むことにしました。
併せて「労働条件の改善」にも前向きに取り組んでいます。ベースアップと定期昇給で賃金の見直しをしました。今いる社員が、「この会社なら安心して長く働ける」と思える会社にするためです。
また、育休・産休・介護休暇・定年延長など就業規則の改訂を行なっています。ダイバーシティ経営への取り組みとして65才以上の高齢者雇用も視野に入れないと雇用の確保も厳しくなります。
二つ目の課題は「人口減少に伴う市場の縮小への対応」です。
人口は減少していきます。しかし、会社の発展を考えると現状維持では先はありません。そのため、「会社と自分の10年先を考える会議」をはじめました。若い社員に参加してもらい、情報だけでなく課題を共有し、新規事業の立ち上げを開始しました。
●労使見解と共育について
労使見解には「経営者である以上いかに環境がきびしくとも、時代の変化に対応して経営を維持し、発展させる責任があります」と書かれています。現状分析で「人口減少だから売上も伸びない」と言うのは簡単です。逆境の中でも発展できる企業は経営理念を社員と共有し、経営者が社員と共に育ちあっているところではないでしょうか。
同友会の学びと人間尊重の経営で自社の発展をめざしましょう。(記 事務局 児玉)