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2016.01.07

⑩第9分科会「中小企業が『変わらなきゃ!』 ~良い経営環境を自らつくろう」

【報告者】呉伸工業㈱ 代表取締役  岡本 祐一 氏(呉副支部長)
【報告者】呉市産業部商工振興課 課長  笠井 康弘 氏
【報告者】呉信用金庫 営業店支援本部 法人取引支援グループ グループマネージャー  近藤  孝 氏

 第9分科会は、まず座長の瀬島氏(合同呉運送㈱ 社長、副代表理事)が、経営フォーラムのメインテーマと本分科会のねらいを確認しました。
 3者には報告の後、これからの可能性について発言いただきました。分科会の概要をご紹介いたします。

岡本氏(左)と座長の瀬島氏(右)

理念が未来への入り口

 創業して41年になる鉄工所です。私は2代目です。
 我社は他社がやらないようなものに特化しており、経営理念の一番目は「私たちは、一般、平均、標準、を排除します」とし、「奇人・変人集団」を自称し、めざしています。
 例えば、プラント用発電装置のサイレンサー(消音装置)。超高圧の圧力容器などです。法的な取り決めがたくさんあり、普通の鉄工所にはないような、日本規格や世界規格のライセンスを多数取得しています。
 6月1日、41周年の創業記念日に新しい中期ビジョンを発表しました。「規模の拡大はやめよう、品質、財務体質、社員の質的レベルアップが次の目標だ。自社の個性をより強くしていこう」と話しました。それから我が業界の環境について「生産の海外流出、国内の空洞化はさらに進む。だが製造スキルは維持しつつエンジニアリング機能を高めていく。そのためにお互いの役割に応じた目標を定めてほしい」と話しました。次に課題として、より強いられる競争への対策を話しました。最後に「一年後どうなっていたいか。45周年までに会社がどう変わっていたいか。そのために個々人がどう変わっているべきか考えよう」と話しました。
 毎年、少ずつ会社を変えてきたつもりです。時代の変化をモロに受ける業界だからこそ、今後もありたい姿を定め、自社の背骨は曲げずにいきたいです。
 地域に対して、我社は自社のビジョンを実現し成長発展をはたし、経営の安定化による貢献をしていきたいという思いがあります。
 同友会呉支部は1990年から共同求人活動を始めました。単に人を採るためだけでなく、先生方と手を取り合って、共に地域で若い人を支援する活動になっています。新入社員は自社の未来です。彼らの成長が会社の成長です。この活動は永続すべき最大の地域貢献だと思っています。
 中小企業振興基本条例(以下、条例)について。呉支部ではプロジェクトを立ち上げ50回を超える会合を重ねています。呉市に4団体(呉商工会議所・呉広域商工会、広島経済同友会呉支部、同友会呉支部)の連名で条例制定の要望書を出しました。当初は、まず呉のことを知ることを目的に、呉市の協力を得て1年かけて「呉学」を行いました。それでも方向性がぼやけていました。議論を重ねる中で「企業は理念が未来への入り口。理念がないと企業の未来はあり得ない」という経営者の発想に立ち返りました。
 この過程のなかで受け身ではなく、経営者として自社が自立自生するためにはその地域で認められることが重要で、社員が誇りと自信を持てる企業になることが大事なのだと気づきました。経営者には自社を通して、地域の未来を発信する役割があると感じています。
【呉伸工業㈱ 会社概要】
◆資本金:1000万円 ◆年商:5億円 ◆社員数:30名
◆ホームページURL:http://kureshin-kogyo.com

主役は中小企業

 呉市の現状・役割・変わらなきゃ、についてお話しいたします。
 呉市は旧海軍工廠から続くモノづくりに特化した都市です。多くの市民の方が呉市に愛着を感じていることも特徴です。現在、呉市では人口減少を見据えて、平成32年度末における将来都市像を長期総合計画にまとめています。
 目指している姿は「絆と活力を創造する都市・呉」です。協働による自主的で自立したまちでなければ生き残れないと考えています。
 この上で、まず「人づくり」。市民主体のまちづくりを展開していきます。次に「地域づくり」。特色ある資源・産業をいかしていきます。最後に「都市づくり」。周辺都市との連携もしつつ元気な呉市を創出していきます。
 呉市は、歴史的な背景から高度な技術、人材を有する企業が集積しています。行政の役割は、主役である中小企業を支援することだと考えています。
 例えば、(公財)くれ産業振興センター等の産業支援事業は、地域産業の夢を実現するためにきめ細かい対応をしています。ご活用ください。
 近年、地方創生が叫ばれています。呉市では「仕事づくり」「人づくり」「まちづくり」として事業展開しています。呉市の産業や消費を支える若い世代が定着し更なる活性化を図るため、「呉らしさ(呉の特色)」を生かした雇用創出に積極的に取り組んでいきます。
 庁舎は、呉市民と共に、絆と信頼「安全・安心」を守ることを主眼に建て替え、生まれ変わります。
 呉市は、地方自治法の改正により、特例市から中核市に移行する予定です。行政としての事務権限を強化することで、より市民の利便性を向上させることができます。
◆ホームページURL:http://www.city.kure.hiroshima.jp/

笠井氏(右)と近藤氏(左)

地域と運命共同体

 呉信用金庫からは4点お話しいたします。
 まず、当金庫について。信用金庫は信用金庫法を根拠に成り立っています。営業地域は定められた地域に限定されます。設立は1925年(設立90年)です。経営理念の1番目は「地域社会の繁栄に貢献する」です。今年度からの中期経営計画のスローガン「CHALLENGE & SPEED」のもと、4つの基本方針(営業基盤の拡大。経営管理態勢の強化。人財育成・人財教育の実現。CSR活動の深化)を掲げ、役職員が一丸となって、業務に邁進しています。
 次に中小企業の皆様への取組みについて。創業期の企業への支援は「公益社団法人 アクティブベースくれ」、「呉創業支援ネットワーク」等があります。成長期・成熟期の企業への支援は「ビジネスマッチング」、「しんきんマッチングサービス」、「くれしん地域企業応援ガイドブック2016」、「補助金の情報提供、申請支援」、「中小企業技術・経営力評価制度」、「知的資産経営セミナー」など。呉市とも連携しています。衰退期の企業への支援は「事業承継支援への取組み」です。一番身近な相談相手でありたいと思っています。
 続いて同友会呉支部との連携について。勉強会で講師を務めたり、行事に来賓として招待をいただいています。また、(公社)アクティブベースくれなどでは、審査員など役割をお願いしています。条例推進プロジェクトでは、第30回からメンバーに入り、どうやったら呉地域が盛り上がるか一緒に考えています。
 最後に呉市とは、創立当時から連携を続けています。「地方創生に係わる包括連携に関する協定」を結びました。呉市の創生に向けて力を合せています。
 呉信用金庫は、行政、或いは中小企業・小規模事業者の方々と共に、歴史を歩んできたといっても決して過言ではありません。呉地域と呉信用金庫は運命共同体であると考えています。
◆ホームページURL:http://www.kure-shinkin.jp

5年後、10年後の呉市の可能性

近藤 呉市は同規模の都市と比べ、産業振興センターや、金融機関の本店があり恵まれていると思います。人とひとのつながりを基本に、それぞれが当事者意識を持つことができれば、呉地域ならではの生き残りが見えてくると思っています。
笠井 本日参加して、それぞれが自助・共助・公助の姿勢を基本にベクトルを同じくし、五年後、一〇年後の呉市の姿をつくっていければいいと思いました。
岡本 基調講演を聞き、呉でも夢は描けると確信しました。諸先輩が残した資源を活用しながら、中小企業一社一社は自力を高め、伸ばし、若者が夢を持って呉を発展させていこうと熱くなれるまちになっていける仕組みが必要ではないでしょうか。

そのために何をするか

笠井 一緒に問題・課題を考えていくことだと思います。
近藤 当金庫は経営者の一番身近な相談相手でありたと思っています。企業と金融機関は経営指針で未来を語り合えると思っています。
岡本 中小企業にしかできないことに誇りを持つことであり、「変わっていく」という意識を持ち、やり続けることだと思っています。