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2016.01.07

⑨第8分科会 「自分(経営者)の姿勢を変える ~経営指針は社員と共に~かわらなきゃ~」

パネリスト 
㈲広島ピーエス 取締役  船田千代美 氏(経営幹部) 
㈱アタック 代表取締役  小田友里香 氏(創業者)  
㈱明販広島東 専務取締役  岡本 昌代 氏(経営者夫人)
コーディネーター(座長) 
㈱キャピタルコーポレーション 代表取締役  村井 由香 氏

左から室長:土屋氏、報告者:船田氏、岡本氏、小田氏、座長:村井氏

村井 本分科会は経営指針書の実践的な入門編としてディスカッションの形式で進めます。
 昨年度、県女性部会では女性だけの経営指針勉強会を開催。
 参加者は自社を何とかしたいという熱い思いを抱かれていました。今日は受講された方から、指針書に真剣に取り組んでいくのはどうしたらいいのかを話して頂きます。
 指針書の入門編として経営幹部、経営者夫人、経営者といったお立場から指針書の作成、実践の報告をしていただきます。

自己紹介と会社概要について

船田 私は5年の金融機関勤務後、10年の専業主婦を経て現在の会社で取締役をしています。
 当社は父が創業、現社長は弟です。東広島市福富町で金属加工業をしています。大手自動車メーカーの大型部品を運ぶための専門台車メーカーです。
小田 当社は女性専用リンパマッサージ専門店リンパタイムを運営しています。07年に個人創業で9期、法人3期目。社員数は、正社員6名全員女性です。
 前職の海上自衛官時代に心身の不調を、このマッサージに助けられたことで、リラクゼーション業界を志しました。
岡本 当社は㈱明治の特約店で乳製品の宅配販売をしています。他にミネラルウオーターの宅配事業も行っています。
 社員数12名、他配達スタッフ26名で約5000軒のお客様の自宅に美味しい物、健康に良い物、季節の旬の物などをただ単に食べるという事ではなく、心をかけて食べる、また健康に良い情報をお届けし、生活の質の向上を目的としています。

経営に関わり、苦しい、つらい、泣きたいことありましたか

船田 リーマンショックから来る不況で11年に大幅欠損となりました。
 自動車部品の新規受注ゼロ、定期預金ゼロ、保険ゼロ、普通預金に少しの現金があるのみでした。
 社長は忙殺、スタッフの気質は学びあう風土なしという状態でした。
小田 今に活かす努力を続けている失敗は、大切な社員さんに夢を見せることができていないと気づいた時です。
 私は過去の経験から目標を同じくすればチームとして一丸となれると考えていました。
 しかし、社員は共にビジョンを見てるわけではなく私の方を向いているだけ。それは様々なことに「やっているつもり、伝えたつもり」になっていないか振り返るきっかけになりました。
 そこで共有だけでなく、社員が発信できる環境作りに取り掛かりました。
岡本 新卒10年目の社員が事情で退職することになりました。
 その社員が退職した時、会社がグラつきました。そんなとき、入社した第2新卒の社員も退職すると言ってきたのです。
 私なりに声をかけ、他の社員に気を遣い一歩下がり縁の下から皆を支えてきたつもりでしたが、何かが違っていたのだと気づきました。
 それがきっかけで皆にとって誇りに思える会社をつくりたいという私の職場貢献の誓いの原点となりました。

経営指針を知ったのはいつ

船田 現社長が専務時代に作成した指針書がありました。自分の経験や勉強不足で指針書そのものがよく理解できていませんでした。
 指針書がそんなにいいものという疑問もありました。例えるなら夏休みの計画と同じで、計画倒れになるというイメージがありました。
小田 計画書は、創業当初から作成していましたが、先の「やったつもり」でした。
 「伝えたつもり」の失敗など、社員と共に育つためには、自分の考え方だけではダメだと思い、外に出て勉強することに決め、3年前に同友会に入会し、一から学ばせて頂きました。
岡本 皆さんが経営指針と言われるので、そういう経営ツールがあり、流行っているものなんだと思っていました。
 同友会で指針の勉強会に参加し、会社の中にあることに気づきました。社長が経営会議にいつも印刷して配布し皆に話していました。でも、何度聞いても意識できていませんでした。

グループ討論の様子

あなたが変わることで、何が変わりましたか?

船田 社風が変化しました。もともと学び、共有する風土のない会社でした。
 今では決算報告と年度方針発表会議として、指針書を発表し理念、ビジョン、目標と成果を共有していきます。
 直近の経営状況発表では、製造部の「ものづくり」の面白さや真剣さ、喜びがどこのあるのかを知るため、社員の社員による社外勉強会を企画しました。
 研修で「僕たちこう思っています」「しっかり勉強してきて活かします」「社外勉強会の機会をありがとう」「最高のエピソードはこれでしょう」でしたとメールが来ました。本当に泣けました。社長の目にも涙がうかんでいました。
 2年前には、会社支給の制服や作業着も揃って着れなかった社員が、考え方が変わったんだと感じています。
小田 計画書を全員で作り、社外に向けて決起発表をした後から、社員の行動が変わりました。
 PDCA勉強会や技術練習、おもてなし実習会など、社員主催の勉強会が増え、社員間育成が活発になりました。向かうべき方向が明確になったことで、彼女たちの力が発揮されるようになったのだと思います。
 他にも社員の成長で嬉しいことがありました。入社四年目の社員がお母さんにありがとうの手紙を書くように。充実し人間的にも豊かになっていく社員の姿に幸せを感じます。
 また社外の変化では、中期計画に協賛してくれる同業者様とご縁がありました。金融機関に関しては、法人1期目の決起発表会後、借入金利が1.5%下がった上にプロパー融資の借換になりました。
 私一人では成し得ないことが形となり、社員と共に経営することの大切さを実感しています。
岡本 私が強くなった分、社員は少し気持ちが楽になったのではないかと思います。
 自分たちは何に取り組むのか、自分の役割は何か考えるようになったと思います。まだ、一人一人は自分の事で精一杯ですが、確実に周りの仲間への声掛けは増えたと思います。
 先日、「やる気が無くなりました。退職したいと思います。気持ちは決まっているので何を言ってもだめです」と言ってきた社員がいました。
 他の社員が電話でその退職したいと言っている社員を励まし、悩みを聞いてくれ、また他のメンバーも角度を変えて励ましの声掛けをしてくれました。
 後日「がんばってみます」と元気よく言ってきてくれました。今、その彼は仲間に支えられ頑張っています。

経営指針書の活用や課題、実践方法を教えて下さい

船田 今後の課題は社員の採用です。同じ方向を向ける社員の採用をしたいです。
 行動計画を実行するときに、会社を挙げての目標達成に向けて、何をするのか。またスキル向上も課題です。各種資格取得などもしていきたいです。
小田 自分だけで作ると、社員は「いいですね」と聞いてくれたとしても、一方通行になると実感したので、社員が三人になったとき、全員で作成することにしました。
 やる前の前提にあるのは、創業の目的と、喜びの価値観である経営理念、そして各社員が担っているリーダーの定義です。
 共に経営計画書を作るという面で、最初にやったのがそんな方法ですが、活用としては、3つのため(①社員幸福=成長のため、②創業の目的のため、③ステークホルダーや求人活動)に毎年作成を続けています。
岡本 経営者、社員、社内のコミュニケーションには絶対必要だと思います。
 業績目標も大切ですが、まずは一人一人が何を考え何に悩んでいるか、問題を確認するのに必要だと思います。これから毎年みんなで作ってしっかり職場のコミュニケーションを深めるツールにしていきたいです。

新しい挑戦を教えて下さい

船田 経営の采配により赤字から脱却し4期連続黒字です。
 未来への挑戦は3年後に当日受注、翌日納品のスピード発送を実現しタフな台車メーカーとして社員数25名、利益率を落とさず年商五億円をめざします。
 また、東広島市の市街地の工業団地への進出をめざしています。ただし、現在のコンビニひとつない田舎町へはるばるお見え頂くお客様には、手塩にかけた製品を今まで通りお届けすること約束します。
小田 この五年でめざすのは、創業来のコンセプト「地域の元気応援団」をより深めていくこと。
 来期、ドミナント店出店で異なる顧客層ニーズにお役立ちし、小さくとも堅実な市場を作ります。
 職場環境ビジョンは、長いお付合いができる働きやすい会社作り。人財育成ビジョンは主体的なおもてなし美人です。
 私も社員と共に努力し成長し、創業の目的を根気よく築いていきます。
岡本 健康を支える仕事をしてきました。理念にあるように地域の健康を支えるという意味で何ができるのか考えました。
 一番身近なサポーターとして健康応援ステーションとして変化して行こうと考えています。
 事業に携わる人材を育てていきたいと思っています。これからは自分が頑張るだけでなく、社員一人一人の力を活かし、もっと世の中の役に立つ会社にして行きたいと思っています。他にはない温かい一番身近なサポーターとして地域の皆様を満足させます。