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2016.01.07

⑦ 第6分科会「 自分たちにもできる地域内連携 ~地域での仕事づくりをどうするか ~環境問題こそ中小企業連携でビジネスチャンス」

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講師:広島修道大学人間環境学部 教授  豊澄 智己 氏

地方の時代~隠岐の海士町の魅力

 最近テレビでよく取り上げられている隠岐島の海士(あま)町は、1島1町の小さな町ですが、エネルギーや教育問題、中山間地域や起業・ベンチャー、地方再生という切り口からも注目を集めている町です。人口は昭和25年くらいからどんどん減っています。高齢化率は40%です。平成一五年には平成の大合併をせず、単独で行くと決意した町です。それから十数年、攻めと守りの戦略を打ち立て、一般会計基金を少しずつ増やしています。
 守りの戦略とは、公務員の給与や議員報酬を削減し、徹底した行財政改革を行ったことです。攻めの戦略とは、第一次産業の再生で島に人(雇用の場)を増やし、外貨(本土のお金)を獲得し、島を活性化することでした。成長の源を島の外に求めたのです。
 観光客の落とすお金をどう取り込むかを真剣に考え、島丸ごとブランド化を企画。その一つがサザエカレー。隠岐の海にある豊富な海産物を牛肉の代わりに使ったのです。それから岩牡蠣。春風と名付け、春に売り出そうとしています。牛は隠岐で育て、A5ランクのお肉としていったん東京へ出し、それから逆輸入するのだそうです。今までは生肉の販売だけだったのですが、海士町のレストランで調理して提供することも増えており、起業につながっています。
 こうした種々の産業振興策の結果、若者が島に増え、約200名が雇用されたとのことです。この振興策は「島暮らし運動」の一環であり、働く意欲と能力をもった人へのアプローチであり、起業しようとする人への提案です。だから、その地域でIターンやUターンする者に補助金や住宅などを与えるものなどとは少々性格を異にしています。300以上の世帯、およそ500人がIターンで定住しています。総人口は増えないのですが、活力人口と言われる20~30歳が増えているのです。
 一つひとつは小さなことなのですが、連携することによってシナジー効果(相乗作用)を生み、海士町の大きな魅力となっています。地方再生=雇用だとすれば、大成功をおさめている地域だと思います。

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現在の環境ビジネスの様子

 環境ビジネスの概念がまとまったのは1999年です。環境産業分類では大きく4つの分野に分かれます。A=環境汚染防止、B=地球温暖化対策、C=廃棄物処理・資源有効利用、D=自然環境保全です。
 最初にお話しておきたいのは、環境条件は必要条件であって十分条件ではないということに留意する必要があることです。例えば、環境に配慮して建てているからと言って、少しくらい傾いた家を建てても構わないという事にはならないわけで、しっかりした家を建てるなど、求められていることを満足させたうえで、しかも環境にやさしいとならなければなりません。
 限られた資本をどの分野で利用するかを考える場合、成長の分野をおさえておくことは大事だと思います。Aの分野のビジネスの広がりは横ばいです。Bの分野はものすごい勢いで伸びています。とりわけ太陽光発電は、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)のお蔭で成長が著しいです。Cは4つの分野の中で最も大きいので、成長が鈍くてもビジネスとして有望な分野であるともいえます。リサイクル法などの関係ですね。Dの分野は横ばいです。

環境ビジネスのトレンド

 このように分類されている環境ビジネスはどこから生まれたのでしょうか。第1に、水質汚濁や大気汚染の防止など、公害問題からでした。喘息とかイタイイタイ病とか、人体に大きな影響を及ぼす問題を何とか止めないといけないということからでした。
 第2に、ローマクラブの『成長の限界』が関係していると思います。72年、ローマクラブが人口増や環境汚染など、現在の傾向が続けば、百年以内に地球上の成長は限界に達すると発表、これを契機に工学系とか物理学とか、様々な分野の研究者がこの分野に関心を持つようになります。しかし、技術開発の進展や需給の変化、効率性の追求など経済学的な分析が十分でなかった点は否めません。
 第3に石油危機も影響しています。その他にも多くの社会的な影響を受けて環境ビジネスは大きく発展してきたのです。
 日本は公害防止機器の分野では世界で絶賛され、82年には公害問題を解決したと評価されるまでになりました。次に出てきたのが省エネ・省資源、リサイクルビジネスで、これも日本の得意とする分野で、世界に名だたる技術を持っています。
 99年からは地球温暖化が着目されるようになってきました。排出権取引の枠組みが議論され、ビジネスとして大きく成長しています。
 12年7月から日本でFITがスタートしました。この政策の下で、太陽光はもちろんですが、風力や水力、バイオマス、地熱の再生可能エネルギーを利用した発電が有力な環境ビジネスに発展してきました。最も注目されている太陽光発電のビジネスのキーポイントは、設置場所の選択にあります。例えば、戸建て住宅の屋根、マンションの屋上はいうまでもありませんが、耕作放棄地や遊休地など、誰も利用してこなかった場所をいかに活用するかです。見方を変えれば地方にたくさんある安い土地を使うことなのです。
 ところで、FITは地方資源の活用というミクロ的効果だけでなく、マクロ的効果ももたらします。太陽光発電を中心とする再生エネルギーの活用は、日本のエネルギー自給率を高めています。数兆円とも言われるカネは国内に還流しており、地方経済活性化の重要な起爆剤となりえます。例えば、発電システムの普及に伴う契約、施工、保守メンテナンスなどの仕事は、地域の中小企業がバリューチェーンを分担することが可能だからです。排出権取引などで海外にカネが流出した時とは全く異なる効果を地域にもたらしうるのです。
 ポストFITの最初の注目度の高いビジネスは蓄電池です。20年ごろには、FITは言うまでもなく、その前身の「太陽光発電の余剰電力買取制度」の環境政策を背景に太陽光発電の設置が相次いだ時から10年を迎えます。つまりは、この頃から売電価格が買電価格を下回るようになるので、発電した電気は売るよりも自身で使うほうが得になります。したがって、つくった電気を蓄える蓄電池の関連が大きなビジネスになる可能性が十分にあります。各社が蓄電池で競い合っています。なお米国のテスラ―社が住宅用蓄電池を10KW/hモデルで3500ドルという破格の価格に設定したことは非常に驚きでした。環境ビジネスがグローバルに進むことを示唆している事例でしょう。
 今説明したエネルギー関連の環境ビジネスの連携事例として典型的なものがゼロ・エネルギー住宅です。再生可能エネルギーでの創電、蓄電池を利用した電気の貯蔵、そして家庭で使うエネルギーを節約するための管理システムを利用して、売電量を最大限に増やし、買電を必要最低限に抑え、エネルギー収支をプラスにするのです。加えて、高気密・高断熱の住宅づくりを進めていけば、住宅が自動的に売電してくれるカネによって住宅費用の一部を賄うことは十分に可能なはずです。

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環境ビジネスと地域連携

 政府の平成28年度予算の概算要求では、再生エネルギー関連に多額の予算が申請されています。これを皆さんがどう利用するのでしょうか。これまでエネルギーと言えば巨大な電力会社の独壇場だったのが、中小企業が活躍できる場ができつつあります。それを後押しする経産省や農水省など様々な政策が立案されています。それを活用し、中小企業が地域経済に的を絞って経営戦略を立てることができるようになりました。
 先ほどの太陽光発電では計画・設置にビジネスの焦点がありました。一方、森林バイオマスは供給することに成功のカギ要因があります。木材を切ったり収集運搬をしたりする作業、木材をチップにしたりする施設や機械、ボイラーを設置したりメンテナンスする仕事など、まさに中小企業の新しいビジネスを地域でつくることができます。森林バイオマスの小規模発電事業では、営業利益9000万円、7~8%の収益率で、管理者1名、運転者3名の雇用が可能であることが試算されています。経営資源の限られた中小企業が環境ビジネスの全体に関わることは困難かも知れませんが、連携することで地域の仕事づくりができます。エネルギーは海外から、大企業だけだったものが、地域、あるいは中小企業に変化しつつあるのが現在です。
 今後、環境ビジネスのどこに力をいれるのか。それぞれの得意分野を活かしたり、成長率の高い分野、成長の可能性の大きな分野も良いかもしれません。逆に多くの者が撤退しようとしている分野にニッチとして入っていくことも良いかもしれません。ご自分の経験や資本などに照らし合わせて戦略的に判断し、競争し共存していく関係をつくっていけばいいと思います。その考える場が皆さんの同友会ではないでしょうか。