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2016.01.06

⑤第4分科会「 環境メーカーとして地域に発信 ~地球環境を軸にした『企業づくり』と『新規市場開拓』への挑戦~」

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報告者:㈱リバイブ 代表取締役会長 平沼 辰雄 氏(愛知同友会 中同協地球環境委員長)

平沼建設工業はどんな会社だったか

 我社は1964年に平沼組として、父が設立しました。当初は土木業の3次下請けでした。解体工事もやっていました。今のようにきちんとした考え方もなかったので、ごみを夜中にこっそり野焼きするなんて日常の事でした。夜だと煙が見えないからです。顧客からは値段の事しか言われない。社員も入っては辞めの連続で、私自身、「もうこんな仕事はいやだ」と思っていたものでした。

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自社の存在意義の確認

 31年前同友会と出会い、入会しました。最初のころは言われていることがわからず、出席も滞りがちでした。
 ところがたまたま例会で愚痴を言っていると体験報告の役が回ってきました。その時、先輩会員から、「あなたの会社の存在意義は何か」と聞かれてドキッとしました。
 そこで、先輩の経営指針書を借りてきて、それを自社に置き換えて書き直しました。これが二十五年前の最初の経営指針書です。
 リバイブの経営理念は「地域から地球へ地球クリーニング」です。まず地域の中で私たちリバイブが率先してごみ問題から地球環境に良い取り組みを行い、実践するモデルとして存在したいとの思いから生まれました。

企業強化に取り組む

 とにかく良い会社にしたい、信用される会社にしたい。解体業をメインにするとともに法人化し、がむしゃらに飛び込み営業を行って、1次業者になることに成功しました。
 また、良い会社への一歩として、未来工業の社長でした山田さんと1日ご一緒する機会があり、よい会社、人を信頼するとはなどの話を伺い、外部からスカウトした方に経理総務部長になってもらいました。彼と話をして、透明性を高めるために、経理公開を行いました。つぶれない会社にするために、手形を切らない方針を出し、3年で振出手形をゼロにしました。
 実務の手順も先輩の手順書を自社に合うように書き換えて、少しずつ浸透を図っていきました。

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社員の反応と変化

 ところが社員の反応は冷ややかです。下請けで元受の言うことを聴いて仕事をすればよいと思っている人達は、「何を急におかしなことを言い出すのか」「ボンボンがなんかやっとるわ」程度です。業務改善も、「現場で小便をするな」と言ったところからのスタートです。「安全な作業のために、○○をしようよ」「俺たちの仕事の意義は○○じゃないのか」…。現場で具体的に語り続けて信頼関係を深めていくと、少しずつ変化が起こってきました。
 ’99年に㈱リバイブに社名を変更しました。「リバイブ」とは「回復する」「復元する」という意味です。21世紀を迎えるにあたり、同友会の共同求人で得た若手社員と一緒に考えたものです。「社会的に存在価値のある会社にしたい」という思い入れがここに表れています。「解体」だけでなく、廃棄物処理・循環も含めた総合資源循環業、原状の回復や復元を目指す思いで新たなスタートを切りました。現在では、経営指針作りに全面的にかかわってくれるようになりました。

顧客を巻き込む経費削減

 建築現場や解体で出るゴミには、実に様々なものが混ざっています。我社はそれを手作業で分別しています。ところが分別が困難なものもあります。そこで、お願いして、仕分けBOXを置かせてもらっています。そこで働く業者さんや施工会社の方を集めて、講習会を行います。
 解体で出る産業廃物処理では、立米あたりいくら、という値段の取り決めがされることが多く、我社は率直に言えば、他の業者より少し高いのです。しかし、私たちは我社を使って頂くことで、ゴミそのものを減らし、結果として経費を削減することを提案しています。
 取引させていただいている会社で分別が十分でない業者様には、「きちんとこうすればこれだけ経費削減ができますよ」という提案をして、改善が必要な業者様には改善提案書(イエローカード)をお送りしています。こうした積み重ねで、我社のファンになっていただき、コスト競争に巻き込まれない会社づくりをめざしています。
 取引先企業は「売上増」「利益増」という目標を掲げています。この目標を達成するためには「コスト削減」「企業リスクの回避」「環境負荷の軽減(エコプロダクツ)」の三つに触れる提案を行うべきだと思います。

環境の善循環をつくる

 リバイブへの社名変更と共に、将来ビジョンを策定しました。会社の方向性を「自然環境の回復・復元に挑戦し、善循環社会の実現をめざす」としました。そのため、まず廃棄物の徹底した再資源化に取り組みました。そのためには、徹底した分別が必要です。分別したものを資源として再利用するサイクルも必要です。それを購入してくれる賢い消費者も必要です。善循環社会の構築のためには、その意義を社会にきちんと認めていただく必要があります。そのためにも、我社は経営理念や存在意義、目指したい方向を、地域に発信し、お客様にご協力いただいているのです。

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事業革新のためには、徹底的にパクって実践

 これまでもお話してきた通り、あるいは資料の中の文章を見ていただければお分かりだと思います。私は何も経営がわからないところからスタートしましたから、先輩の資料をお借りしては、それを徹底的にパクリました。また、同友会の様々な文章を、社内に持ち込みました。何が大事なのか、同友会の発行する書籍を徹底的に学んできました。赤石・元中同協会長や、未来工業の山田さんにも親しくお話しし、教えをいただいてきました。それを「まねて」社員と議論を繰り返し、一つずつ具体的に実践してきた、と言うのが真相です。

会社の取り組みを見てくれている人々がいる

 しかし取り組みを実直に続けていると、見ていただける方には、見ていただいているのです。2007七年に行われた、第1回「市民が選ぶCSR大賞」で全国16位になりました。日本財団が行った調査では、東証一部上場会社を中心にした建築業者の中で第4位に輝きました。
 こうした社会的な評価をいただくことは、営業上もプラスになりますが、何よりも社員さんのモチベーションにつながります。さらに仕事に磨きをかける原動力になるのです。
 現在では「まごころ解体・こわすことから始まる新たな街づくり」というリーフを、新聞折り込み広告としてだすという、業界初(だと思う)の試みにまで発展しています。

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中小企業が環境問題に取り組む意義

 CS(顧客満足)やES(社員満足)を追及している企業は多いと思います。私はこれからはさらにGS(地球満足)も大事な追求課題だと考えています。地球は有限で制約のある存在です。それを使い切ってしまう前に、手を打たなければなりません。それができない企業は陳腐化すると思います。
 当社が行っている解体工事から廃棄物処理というビジネスも必要ですが、善・循環で資源循環という社会全体で廃棄物にしない社会システムづくり「資源循環業」で「廃棄物にしない、でないようにするにはどうするか(使い切るにはどうするか)」とか「根源を絶つ(予防する)」など資源生産性の向上という広い視野で捉えると、ビジネス的にも大きなチャンスに発展すると考えています。

新しい公共をめざして

 その一環として、中同協ですでに取り組んでいる同友ECOをもとに、2013年全国総会に提起した考え方がエネルギーシフトです。エネルギーシフトとは、①エネルギーそのものをシフトする、②大規模集中型から小規模分散型へシフトする、ということです。その柱は、①徹底した省エネ、②地域暖房・コージェネレーション、③再生可能エネルギーです。これを進めることは、企業・仕事づくり、地域づくり、暮らしづくりに繋がり、さらに国づくりに発展するでしょう。そのためにも、同友会の中で学習を積み重ねる必要があります。
 私たちが、一歩実践を進める「自助」を行い、同友会の仲間で「共助」の体制を作り上げ、「新しい公共(真の公助)」を提起・実現する事こそ、同友会運動の新たなテーマではないかと考えています。