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2016.01.06

③第2分科会「人を生かす経営とは ~GCH(企業内総幸福)から『日鐵内総幸福』へ」

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報告者 ㈱日鐵鋼業 代表取締役  能登 伸一 氏(福山支部)

㈱日鐵鋼業 経営理念

 我が社は鉄鋼金属分野において、ものづくりの一翼を担い、全社一丸となって地域の皆様から信頼され愛されることを目指します。
 そして社員一人ひとりの幸福と夢を実現させるとともに地域社会の発展に寄与することを誓います。

何もなかった入社当時

 学校を卒業し、他社に勤務し26歳で日鐵鋼業に入社しました。非常に暗い会社でした。チャイムもない、制服もない、社員同士のコミュニケーションも少ない会社でした。出社して鉄板に腰かけて、世間話をちょろちょろとして、ベテラン社員の合図で仕事を始めます。時間から時間の仕事はしっかりとしますが、それ以外は何もしません。昼休憩にお客様や郵便が来ても誰も応対をしない会社でした。タバコの吸い殻もそこらじゅうに散らかっていて、私が拾って回っていました。
 私は大手の商社から帰ってきていましたので、町工場はこんなものかと思っていました。

専務になって初めての飲み会~同友会で学び実践するきっかけ~

 1990年29歳の時に同友会に入会しました。他の活動は参加していませんでしたが、地区例会には参加していました。
 5年後に専務に就任し、あんな会社になりたいなと感じていた事を実践します。幹部社員二人を誘い面談(飲み会)です。
 最初は何も言わず黙っていましたので、何でも良いから話してくれと言いましたら、机をたたく勢いで、そこから延々と地獄の二時間でした。
 社員から聞かされた内容を紹介しますと、
 ①社員の母親が亡くなり葬儀で休んだら欠勤扱いで給料から天引きされていた。身内が亡くなった時くらい、せめて有給休暇にしてほしい。
 ②最新式の切断機を導入したが、なかなか上手く作動せず社長に無茶苦茶怒られた。私がそんなに悪かったんでしょうか。
 ③ある大手の下請け会社から、現在の給料の2倍出すから転職しないかと勧められた。その時は色々と考えて断ったが、今では転職しておけば良かったと後悔している等々。
 社員の言い分はどれももっともな事ばかりで、私はただ黙って聞くだけでした。
 非常につらい食事会でしたが、今から思えば、この事が同友会で学び続けるきっかけになったんだと思います。
 その後、地区会長、企画委員長を務め、経営指針も作成しました。新卒採用もやりました。とにかく、自分が変わらんと何も変わらないという事を同友会では学びました。(原因自分論)
 そして2010年に福山支部長になり、大きな転機を迎えました。

我が社自慢のホームページ

GCH(企業内総幸福)を目指して

 支部長を引き受けるに当たり、会社の経営と同友会の福山支部をどうしていくのか、所信表明として「GCH(企業内総幸福Gross Company Happiness)を高めよう」をスローガンにしました。語源はブータンのGNH(国民総幸福(Gross National Happiness)です。この言葉は、同友会の研究センターレポートで駒沢大学の吉田敬一先生が紹介されていました。
 その時はとにかく景気が悪く、少子高齢化社会であり、自社の携わっている製造業も国内で空洞化が進んでいました。作っても売れない、欲しいものはなくなった、時代の大転換期にあるということでした。
 日本はこんなに豊かになっているけど、幸せと感じている国民が少ない。逆にブータンの人々は、そんなに豊かではないが国民みんなが幸せを感じている。そういう事をヒントに、我々同友会のメンバーは、今までの売り方ではなく、もっと顧客と密接につながって感動を与えるようなモノづくりをしないといけないと考えました。会社の中も先ず、一人ひとりが幸せになり、会社が幸せになるために色んなことを考えよう、GCH(企業内総幸福)を目指そうと宣言したわけです。
 また吉田先生には、GCHの「C」には三つの意味があると教えて頂きました。カンパニー(会社)、カスタマー(顧客)、コミニティー(地域))です。会社の幸せの実現が、顧客の幸せ、地域の幸せにつながっています。

日鐵鋼業のGCH

 支部長の所信表明と同時に、「日鐵内総幸福の向上」を我が社の経営方針書に掲げました。
 日鐵鋼業内のGCH(日鐵鋼業で働く幸せ)とは何だろうと考えた時に、①やりがいや働きがいがあること、②同僚や仲間と一体感があること、③一人ひとりの個性が発揮されていること、④仕事を通じて自分のスキルや知識が向上できていると実感できること、と定義しました。そして、日鐵内総幸福を実現し、高める為に実践したことが次の三つでした。

①会社の見える化

 一つは、「会社の見える化」の推進です。会社の見える化に欠かせないのが経営指針書です。これをきっかけに、朝礼で月次の売り上げ、経費の公開をしました。数字の事が分からない社員には、税理士さんに来てもらって業績や試算表の解説をしてもらった事もあります。そしてお客様の情報や業界の動向、営業や製造のことなどどんどん公開し、皆が会社の事を知るようにしました。
 社員同士の価値観など判るように、将来の夢や好きな言葉を書いてもらい、会社の方針発表会の時に各自で発表してもらいます。
 会社を自分の事だと思ってもらえるように、先ずは会社の事を伝えるようにしました。

②幸せのコミュニケーション

 二つ目は「うわべだけではないコミュ二ケーション」です。とにかく、社員とのコミュニケーションをするようにしました。
 会社を自分のものだと思っても不公平感や不平等感、わだかまりがあってはGCHに繋がりません。個人面談も年に2回、3回と行います。
 その中でお勧めなのは「開発会議」です。発端は、こんな商品を作りたいな、こんな会社と取引したいな、という事を語り合いたいという思いでした。開発会議がある会社は儲かっているとも聞きまして、素直に自社でも取り入れました。
 当初は、開発会議と言っても名ばかりで、会社や社長への不満ばかりでした。私自身、開発会議がある日は憂鬱にもなりましたが、続けていると段々と提案・改善会議に変わっていきました。この会議の掟は、その場にいない人の悪口は言わない、批判はしない。
 経営者には、社員に言わせ続ける、社員が言った事を聞くコミュニケーションが非常に大事だと感じています。

社員によるプレゼンの様子

③誇りが持てる会社づくり

 三つ目は「誇りが持てる企業づくり」です。利益が出せれば社員にしっかり還元する。うちの会社はこんな良い所がある、ということを少しでも増やそうとしています。例えば、計画的に遠慮なくとれる有給休暇。社員の家族への誕生日プレゼントなど。小さなことですが、この積み重ねが全社一丸につながるのだと思います。

新しい挑戦(これからの日鐵)

 2006年から我が社は「3S活動」を開始しましたが失敗に終わりました。そしてリベンジが2011年にスタートしました。3Sとは「整理・整頓・清潔」です。工場、事務所の掃除、工場で使う材料整理、不要なものの廃棄、徹底してやるとお客様へのレスポンスも早くなります。目的は、無駄をなくし、お客様の信頼を築き、儲かる会社にすることです。会社の改善が自分の豊かさにつながることも分かってきます。とにかく社員全員でやる、これ日鐵鋼業の方針です。

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人を生かす経営

 最後に、この分科会のテーマである「人を生かす経営」とは、社員が自分で考え会社を良くする提案をし行動する、自発的な会社(社風)を作ることかなと考えています。ある会社で、仕事をやると自分の収入になる割合を増やす方法を導入したら、生産性が二倍になったと聞きました。それまでサボっていたわけではないと思いますが、工夫・改善を惜しまず自発的な行動が、結果に繋がったんだと想います。
 我が社では今後、新しい設備投資をし、新たな仕事を作り、年商20億円、自己資本率を上げたいと考えています。20億円を達成したら夫婦同伴でハワイ旅行に行こう、と社員と約束しています。(笑)