②第1分科会「幸せと未来を創る経営指針 ~指針の共有と実践で『最幸』の会社をめざす~」
報告者‥総合包装㈱ 代表取締役 宮城 勇 氏(沖縄同友会)
<総合包装株式会社 経営理念>
一、私たちはめざします!
「包む気持ちを大切に創造する!!」をモットーに、仕事に誇りを持ち、お客様の喜び・共感・感動を創造します【科学性】(顧客本位)
一、私たちはめざします!
個人の成長・我が社の繁栄・豊かな人生でみんなを笑顔にします【人間性】(社員重視)
一、私たちはめざします!
包容力豊かな心を育て、お役立ちで地域社会を明るくします【社会性】(社会との調和)
羅針盤がなかった会社から
私は同友会に入る前は、経営者として勉強らしい勉強をしたことがありませんでした。会社には理念もなければ、社是・社訓もなく、「売上をあげろ」「利益を出せ」と号令をかけて経営していました。
そんな時、同友会に出会い、三つの目的に共感して1995年に入会。翌96年には経営指針作成塾にも参加しました。経営指針の重要性を学び、まさに目からウロコ!でした。早速社内に経営指針作成のグループを作り、経営指針作りに着手しました。
しかし、当時の私は常務で会社に落とし込めない状況。振り返ってみると、『労使見解』の言う「社員とのパートナーシップ」もまだ腑に落ちていなかったと思います。
経営指針を作成して2年ほどが経ち、社内で浸透させることができず、経営労働委員会の先輩経営者に相談したところ、「社長も含め、全社を巻き込まないと難しいよ」と言われました。そこで、98年に第1回の経営計画発表会を開催。この時、会社を維持発展させるには経営指針が必要だと訴えました。理念が日常の判断基準になり、社風になるまで浸透させることはとても大切なことです。
現在の経営理念は3年前に作りなおしたものです。社名にある包装の「包む」という字を調べてみると、お母さんのお腹の中に子供がいる象形文字。とても神秘的で深い意味があることがわかり、この事を知ってもらうことで、日常の仕事にも誇りを持とうと言えるようになりました。
学び、成長する組織へ
2007年には合同企業説明会に参加し、新卒採用にも取り組み始めました。9年間、毎年定期採用を続け、13名が今も続けてがんばってくれています。
同友会と関わるまでは、人が辞めたら中途採用をする、の繰り返し。しかし、他社で育った人はなかなか社風に馴染んでくれません。
2012年からは家庭訪問も実施しています。入社前に家族の方々に会社の歴史、目指す姿まで説明しています。そうすることで第三者的に総合包装のファンになっていただければと思っています。
社内には、大樹会という共に学び成長する組織も作って継続して学びあっています。
2009年から始まった企業変革支援プログラムもすぐに社内に取り入れました。
良い会社にするために自己診断し、経営課題を明らかにしながら、自社の立ち位置を確認する。そして気づきを得て、更なる変革につなげることができます。
「このままでいいのか?」「もっと良くなるにはどうしたらいいか?」と現状に疑問符を投げかけるのです。
我が社では、全国平均と、社員全員の平均・夢合宿の参加者の平均・経営責任者の平均とを比較。項目ごとの評価の高低、過去から現在までの変化などを見ます。
診断結果から、評価の高い強みの項目の理由は何か、さらに伸ばすにはどうしたらいいかを考え、方針を出します。
逆に評価の低い弱みの項目は、課題は何か、どう改善するのかを考えて取り組みます。
回答をレーダーチャートで比較するとひと目でわかります。e.doyuに登録すれば、全国平均なども出ていますから、自社平均の経年変化とあわせて比較することもできます。また、社内の部門・グループごとの変化も、エクセルに打ち込んでレーダーチャートで比較検討しています。
継続して企業変革支援プログラムで自己診断し、社内改善活動に取り組むことで見えてくる変化があるのです。
いい会社にしようと思うなら、経営者が腹を決めることです。やるか、やらないか。先取りは余裕を生みます。先送りは焦りを生みます。皆さんは、いつやりますか?「今でしょ!」ですよね(笑)。
ものさしを使って良い会社にするしくみ
我が社では、以前から「組織風土の状態」を測るものさしを試行錯誤しながら使っています。現在は、企業変革支援プログラムに加えて、顧客アンケート、社員の双方向評価アンケート、社長評価アンケートを使っています。
顧客アンケートは、配送・営業マン・事務員・機械部・会社に対して、満足、まあまあ、不満の評価を聞きます。
2003年から07年を比較すると、当初は不満の回答割合が多く、いかにお客様に目が向いていない「自社チュー(自社中心)」だったかがわかります。このアンケートを実施するようになってから、お客様に目が向くようになり、不満の回答も減りました。
ただし不満は絶対になくなりません。これを隠したりせず、どんどん顕在化させて見える化し、対応することで良くなっていきます。
全社一丸となってお客様から「ありがとう」を集める「サンキュー44良し(ヨシヨシ)作戦!」という作戦も展開しています。お役立ちの仕事を目的に行動すると、お客様に喜ばれ、喜ばれると魅力が増し、支持してくれるお客様が増えるという繁栄の法則でスパイラルが上がっていくのです。社内ではお客様からのありがとうの声を集め、みんなに見える化しています。
全社で取り組むルーティン
8年間継続しているのが、ルーティン目標の実行と評価です。これは講演を聞いて社内に取り込んだものですが、社員全員が夢や希望とあわせて、心・技・体・生活の小さな目標を立て、その実践を毎日やったか、やらなかったかを○×をつけていきます。社内に貼りだして宣言し、表彰制度も設けています。皆から見られていますから、「がんばろう!」という気持ちにもなります。
こういった取組では、経営者が社員に対して「やれ!」と言うのではなく、経営者も一緒にやることが大切です。
毎日チェックしますから、私もやらざるを得ません。8年も継続すると、当初やらされ感満載だった取組の効果のすごさが実感できてきました。ルーティンは恐ろしいです。体が勝手にごみを拾い、ダイエットにも成功しました。そして、日々の私たち大人の行動は子供に伝わり、学校活動や地域活動にもいい影響が出ています。
学習する組織のしくみを作り、地道に人を育て、育つ環境づくりが評価されて、昨年キャリア支援企業として中央職業能力開発協会の会長奨励賞を受賞しました。
たて糸・よこ糸のハイブリッド組織
3年前から部門横断型組織となるチームを作っています。社長依存の指示・命令・管理の体質から、社員が自立して進化生成発展することを目的としました。
一人ひとりは得手不得手のあるピース。それぞれに自分自身にしかできない役割があるはずです。
そこから誰が生徒か先生かわからない、お互いが学びあう「めだかの学校」を目指しています。
支援型リーダーシップができあがったことで、部署間の壁を乗り越えて協力し合える仲間・家族のような関係ができ、ワクワクしながら喜んでお客様へ尽くす活動を実践中です。
共に学び、自ら判断、行動し、考え、成果を出し、チームに貢献する。主体的に行動しつつ、お互いが頼りにしあうパートナー関係ができあがりました。実際に、家族も連れてお得意様を訪問し、沖縄そばの手作り体験をしたチームも出てきました。
良いチーム創りのために、仲間の悪口・陰口を言わない「口害防止条例」で風土づくりには気をつけています。
単なる仕事のつながりから、心のつながりに発展し、共感・共創する「たまり場」ができあがりました。このたまり場は営業も総務もごちゃまぜのチャンプルーチームですが、ものすごいエネルギーが出ています。
めざしている経営
私たちが目指している経営は、競争から創造へ、質的充実と成長、経営理念に照らして科学性(顧客本位)・人間性(社員重視)・社会性(社会との調和)のバランスが取れた経営です。
具体的には、仕事観を共有し、チームワークでお互い成長できる会社、「総合包装があって良かったよ」と言われるようにファンを増やし、当てにされる存在感のある会社、働く仲間が幸せな人生を実現できる会社、ご縁のある人達の幸せに貢献できる会社です。
2020年、総合包装は50周年を迎えます。この区切りの年にビジョン「楽しく幸せに本当に愛される最幸の会社を創ります」の実現を目指してまい進してまいります。