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2024.03.12

2023年度 第2回アンケートの概要 「強み」を磨き「付加価値の創出・増大」で適正な「価格転嫁」を

2024年2月13日

広島県中小企業家同友会
広島市中区中町8-18 広島クリスタルプラザ8F
℡082-241-6006 fax082-241-6007

(はじめに)

経営を直撃し苦難に陥れたコロナ禍が一段落し、活発な経済活動が期待されていますが、果たして好景気感は広がっているのでしょうか?国は個人消費を活発にし、いっそう景気回復を図るために、大号令で「賃上げ」を要求していますが、いよいよその実質的な矛先は中小企業に向いてきており、それが会員企業にとって追い風なのか、逆風となっているのでしょうか?
グローバルに展開する大企業は好業績を続け、株価はバブル期後の最高値を更新しています。このような中で、地域に根ざした中小企業の経営の実態はどのような状況になっているのか、どのような課題を抱え、どのような支援が必要なのか、このアンケート調査から実態を探って参ります。
会員のみなさまの主体的な協力のお陰で、史上最高の回答(回答数1592名、回答率52.9%)を得ました。心より感謝いたします。

(1)業況はプラスを維持するも伸びはわずか

現在の経営状況を示す「業況判断DI」は「+6」で半年前の「+3」から3ポイント上昇しました。1年前はコロナの影響もあり水面下の「▲5」でした。コロナの影響を受ける前2020年1月は「19」から比べると回復力は弱く、伸びもわずかです。製造「+2(前回▲9)」、建設「+8(前回+14)」、サービス「+14(前回+9)」が水面上にあり、卸小売「▲4.2(旋回▲11)」、その他「▲1(前回+6)」が水面下です。「製造」がプラスに転じる一方で、「その他」が水面下に下がりました。水面上ながら建設が4ポイント下がっているのが気がかりです。
「経常利益DI」は、「+18」と半年前の「+16」から2ポイント上昇するもこちらも回復力は弱く、コロナ前の2020年1月の「+39」と比べると、ほど遠い状況です。「1年後の経営状況の見通しDI」は、「+25」となり、前回の「+27」より2ポイント下がりました。見通しDIが降下へ転じたことも気がかりです。

(2)「人件費の増大」が急浮上!半年前より7ポイント上昇

前回同様、「従業員の不足(35%)」が経営問題の第1位になりました。逆に1年半前まではトップ3に入っていなかった「人件費の増大(34%)」が前回3位から第2位へ上昇しました。賃上げ問題が、「従業員不足」と「人件費の増大」という複合した悪化要因を多くの企業が抱えていることは明らかです。「仕入先からの値上げ要請(25%)」「エネルギー費の増大(15%)」というコスト増要因と「同業者間の価格競争の激化(20%)」という相反する要因もあり、価格転嫁が進まない「解決し難い矛盾」を経営の中に抱えている状況です。
「仕入れ価格」は上昇率がわずかに下がり気味ですが、依然、上昇を続けています。上げ幅は「1%〜5%上昇22.5%(前回16.7%)」、「6〜10%上昇30.9%(前回30.3%)」、「11%〜20%上昇18.2%(20.9%)」という状況です。この状況は2年前から継続しており、場合によっては2年前と比較し2倍(100%増)以上になっていることも少なくないと考えられます。上昇局面は未だ止まらず継続している状況です。

 

 

(3)進まない価格転嫁、企業努力も限界に

価格転嫁が進まない状況が続いています。「まったく転嫁できていない28.3%(前回29.0%)」、「1割から2割32.9&(前回33.0%)」と60%超える会員が2割までしか転嫁できていません。「9割4.6%(前回18.3%)」、「すべて転嫁8.8%(前回7.6%))」、十分に転嫁できている会員は僅か13%程度、前回よりも12%減少しています。転嫁できないコストの対応として、「調達コストを下げる22.7%(前回23.9%)」、「調達品の節約18.3%(24.5%)」、「人件費以外の販売管理費を下げる24.7%(25.3%)」などの対応を取っていますが、立場を逆にすると客先へのコスト削減は、値下げ要求され、利用頻度下がるという悪循環ということになります。企業努力も限界が近づいているのではと推察できます。

転嫁ができている理由は、「価格改定の通知25.1%」、「業界全体での理解の進展21.2%」、「原価を示して価格交渉17.8%」が続きますが、その他の書き込みからも決め手はなかなか見つかりません。価格転嫁できない理由は、「取引先企業から理解が得られない20.5%」、「消費者からの理解が得られがたい21.5%」、「交渉力不足21.1%」と続きます。価格以外で自社が選ばれる付加価値(自社の強み)が必要ですが、すぐに対応することは難しいかも知れません。当面は、きちんと情報開示して、しっかり取引先・お客様と粘り強くコミュニケーションとることが大切になります。いずれにしても、価格競争のみではなく、価格以外の付加価値(自社の強み)例えば、安心、早い、丁寧、相談できる、使いやすさへの工夫、鮮度、営業支援、アフターフォローなどを明確にし磨きをかけ、付加価値の高い企業づくりを進めていきましょう。

(4)「人材の問題」は中小企業の構造的課題

経営課題は、「人材の確保・育成・定着62.1%(前回61,7%)」と変わりません。人材の確保が進まず、仕事が受けられない、回せないという状況も見受けられます。ここに賃金上げが重なり、複合的な課題となっています。
人材確保について現状は、「不足気味54.2%」と深刻です。「仕事が増えて不足26.0%」と事業拡大の足かせにもなっています。しかも不足しているのは「正社員45.4%」と経営課題の域を超え、社会問題といえる状況です。
人材の確保は短期的な課題でありますが、選ばれる企業づくりという課題と中小企業が働く場として選択肢となる教育、地域課題としてとらえ、中小企業憲章や振興条例の具体化の面からも長期的な取り組みが必要になっています。

(5)円安は会員に影響している?

円安の影響DIは「▲33」となりました。好影響と答えた方は僅か6.4%で、悪影響と答えた方が39.5%です。
食糧料から原材料、エネルギーなどの多くを輸入に頼る日本において、国内、地域に根ざし、国民の生活を支え経済活動を行う中小企業にとって、「円安」はかなりの悪影響を与えています。外国人労働者の雇用や若者の海外流出という悪影響も起こっています。

 

 

 

 

(6)物価上昇に追いつかない賃上げ

賃金を上げたと答えた会員は、57.8%(前回52.2%)。上げ幅は「1%〜2% 34.1%(前回32.5%)」、「3%〜5% 48.3%(前回49.0%)」で5%までの賃上げが8割強となります。物価上昇率が3%、それに社会保険料等の上昇などを加えると、実質的な賃上げというレベルに追いついていません。社員の生活水準の維持などを考え、必死で賃上げに取り組む中小企業の姿が見えてきます。現状は、原材料費増の価格転嫁の上に、さらに人件費増を価格転嫁することは難しいという現状がありながらも、真摯に取り組むも十分な成果につながっていない状況です。個々の企業努力では追いつかない現状を見ると、消費税の減免や社会保険料の軽減など、国がその責任において賃上げ(可処分所得の増)を行い、個人消費を促すことで、好循環のきっかけをつくることを政策要望として声をあげていく必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(7)資金繰りと金融機関との状況

「資金繰りDI +14(前回+16)」となり、プラス局面ではありますが、半年前より2ポイント悪化、コロナ前の2020年1月「+29」から下がり続けています。コロナのゼロゼロ融資の返済状況は55.9%の会員は問題なしと答えていますが、「返済が始まっており資金繰りが苦しい」と答えた会員が前回17.1%から今回20.5%と増加しており、コロナ後の返済局面に入っても、原材料高、人手不足、人件費の高騰と重い経営課題が新たに降りかかり、経済回復(消費の回復)も進まないことで、計画通りの返済が進まない現状が伺えます。この状況を受け、「コロナ借換保証制度」の活用も15.3%(前回13.6%)と広がっています。
同友会が長年にわたり政策要望で掲げてきた「経営者保証を外す」という要望が「経営者保証に関するガイドライン」として実現しています。個人保証が免除となった会員は「244人17.5%(前回188人14.9%」と着実に増加しています。一方で、免除されなかった会員が「116名8.3%(89名7.1%)」となっています。相談した会員が増加しています。「免除」とならないのは、クリアしなければならない課題があるからです。明確になった課題を克服し、さらなる経営体質強化につなげましょう。

 

(8)消費税インボイス制度は対応が進むも実務や取引上で問題山積

10月に始まった消費税インボイス制度は、「特に問題ない75.3%(前回70.9)」、「問題がある17.2%(17.3)」と一程度、社内対応は進んでいるようです。しかし、社内対応がとても煩雑になり業務増につながっている、建設業では専門職の個人事業主の方との間、不動産業では貸主と借主に間で、税負担について問題が多いとの意見もあり導入後の混乱がより深刻化しているようです。

(9)BCPの作成を今一度

能登半島で大きな地震が発生しました。地震直後の人命救助から災害復旧、復興支援の中で、いち早く事業再開しているのは、経営指針がありBCPも作成している企業だったとの報告がありました。BCPの作成状況は「策定済10.3%(前回9.0%)」「策定中6.0%(7.4%)」「策定を予定23.4%(前回22,0%)」で、僅かに前進しています。しかし、策定済が10%程では災害の備えが十分に進んでいるとは言えない状況です。記憶をたどれば阪神大震災、記憶に新しい東日本大震災、広島でも近年何度も水害に襲われています。現在、南海トラフ地震が予見されています。これらの災害を最大の教訓として、経営指針書に織り込んだBCP策定をしっかりと進めて参りましょう。

(まとめ)今の経営課題は、「価格転嫁」、経営上の問題は「人件費の上昇」

原材料、エネルギー費の高騰、国を挙げての賃上げ圧力、人材確保難から停滞する業績、消費税や社会負担の増という複合的なマイナス要因に取り囲まれ、社員の豊かな人生の実現のための「働き方改革」による労働時間の短縮さえも、現状ではマイナス課題に働いているという、非常に厳しい状況になっていることが浮き彫りになりました。
その打開策は「適正な価格転嫁」とそのための「付加価値の創出・増大」です。自社の付加価値を考え、戦略化していくには、社員と共に自社のお役立つとは何かを経営理念に立ち返って考え、お客様にとっても社員にとっても喜びや満足感を増す方向を定めることです。そのために必要なことは人を生かす経営と経営指針の全社的実践です。
一層、取り組みを強化し、社会的価値の高い、社員も地域もその存在に誇りが持てるような企業づくり企業づくりを進めましょう。そのために、中小企業憲章が地域に生き、地域振興条例で具体的な施策が進むよう取り組みも進めていきましょう。