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2024.05.21

どうなる?「新時代」の景気動向~変化の波を読み解こう

開催日時:
2024/03/07(木)~2024/03/07(木)
会場:
同友会呉事務所+Zoom
人数:
26名
報告者:
講師:日本銀行 広島支店 営業課 岡田 想 氏
文責者:
事務局 木下
講師 岡田 想 氏

ロシアとウクライナの対立により、原油や穀物などの資源価格が急激に高騰しています。また、新型コロナの影響緩和に伴い、需要が増加しています。特にサービス業を中心に労働者が必要とされており、人手不足が人件費の高騰につながっています。個人の家計部門では、物価が上昇しているため、節約志向が強まり、消費が減退している可能性があります。企業部門には材料や原材料の高騰が影響しており、採算性が低下し、売上の伸び悩みが利益減少につながっています。エネルギー価格の上昇が企業経営に大きなダメージを与えています。原材料価格の上昇は世界的な雰囲気に影響を与えており、物価も上昇しています。原材料費は、ある程度価格に転嫁できますが、人件費は企業によっては難しい側面があります。日本銀行としては、人件費の転嫁に注目しており、これが今後の重要なポイントとなるでしょう。

IMF世界銀行の経済成長見通しによれば、2020年の新型コロナの影響で経済成長率はマイナスとなりましたが、その反動で2021年は急激に経済成長しました。しかし、2023年以降は過去の平均成長率3.4%を下回る見通しです。世界的に見ると、アメリカなど比較的調子の良い国はありますが、全体としてはコロナ前の水準を取り戻せていないという姿です。
そのアメリカも、物価上昇に伴い、FRBが金利を引き上げ、経済を冷却しようとしています。その結果、借入金利が上昇しています。このまま金利が高止まりすれば、米国の個人消費がいずれ減少し、米国経済が悪化する可能性があります。これは、経済のリスクとなり得ます。世界経済のけん引役となってきた中国については、不動産市場は厳しい状況ですが、一方で個人消費は意外にも堅調です。ゼロコロナの解除に伴い、抑えられてきた消費が顕在化しているようです。

勉強会の様子

マクロの視点から見ると、日本のGDPは、コロナ前の水準を取り戻しているようです。ただし、物価の上昇もあるため、実際の金額を考慮する必要があります。  消費活動指数を見ると、サービス消費はコロナ前の水準を回復していない一方、耐久財消費は一部回復しています。耐久財は自動車や家電などで、非耐久財は食料品などの日用品です。特に非耐久財は値上げの影響を受けているようです。
また、サービス消費については、国内旅行が回復しているものの、海外旅行はまだ復活していません。投資部門を見ると、公共投資は一部回復しているものの、資材価格の高騰や金利の上昇が影響し、住宅投資はなかなか回復していません。一方、企業の設備投資は緩やかに増加しており、デジタル化や効率化の投資が進んでいるようです。これからの展望を考えると、企業の支出である設備投資は緩やかに増加しており、企業の収益状況は悪くないと言えるでしょう。また、輸出入についても高い水準で推移しています。

企業の経常利益は、大企業から中堅・中小企業まで、金額としては上向いています。企業収益が改善している一方で、賃金の変化が追いついていないため、労働分配率は低下しています。しかし、日本経済全体としての賃上要求は徐々に高まっていると言えます。  物価については、財の価格は輸入価格のピークアウトにより上昇率が一服していますが、一般サービスの価格は人件費が主要な要因であり、価格転嫁が進展しています。ただし、人件費の価格転嫁は難しい課題であり、価格を上げると需要が減少するため、バランスを取る必要があります。  日銀は、物価動向と人件費の転嫁動向に注目しており、経済のフェーズとしてこれらの局面をうまく調整していくことが求められています。賃金の上昇が需要につながり、経済全体の売り上げや利益に寄与することを期待しています。
なお、我々は統計データの分析と合わせて、外部から皆さんのお話を伺っている立場でもあり、こうした意見交換の機会を重視しています。これからも、こうした機会を活かしながら、日本経済の動向に注目し、適切な対策を講じていくことが求められています。