活動レポート
2024.09.24

広島県への政策提案 第8回

開催日時:
2024/09/09(月)
会場:
TKPガーデンシティ広島
人数:
51名
文責者:
事務局 源田

 9月9日開催した広島県商工労働局との懇談会で、粟屋代表理事から梅田商工労働局長に「政策提案 第8回」を提出しました。以下、全文を掲載いたします。

私たちは、「天は自ら助くる者を助く」という自助努力の精神を大原則と考え、主体的に自社の改善・改革に取り組み、自社の発展を通じて、地域の発展に貢献したいと、日々、経営に取り組んでおります。
 平成29年(2017年)10月に施行された「広島県中小企業・小規模企業振興条例」(以降「条例」)は、中小企業・小規模企業を「地域経済を支えるために欠くことのできない存在」として位置付け、多くの関係者が連携及び協力し、「その持続及び成長に向けた取組を支援していく」必要性を訴えています。私たちは、中小企業の自主性に依拠する「条例」の理念の共有と利活用に大きな期待を寄せています。
 弊会が会員企業を対象に行った直近のアンケート調査(※ 以下、アンケート)で、現在の中小企業の業況DI値は「8」で1年前の「3」から「5」ポイント延びましたが、コロナ前2020年1月の調査の「20」と比べ、依然、回復力は弱い状況です。1年後の経営状況見通しDI値は今回「24」、1年前の「27」から「3」ポイント下がり、やや暗い見通しとなっています。
 円安、原材料やエネルギー費の高騰などが続き、賃上げ圧力も一層高まる中、容易に価格転嫁が進まない状況で、中小企業の経営は厳しさが増しています。そのような中で経営問題のトップは、「人件費の増大(35.5%)」「従業員不足(35.3%)」と人に関する問題です。「人材不足」を訴える会員は53%、中でも「正社員が足りない」と訴える会員は42%と人手不足は、中小企業の深刻な経営課題から社会問題となりつつあります。
 これらの現状を踏まえ、中小企業を支え、活力を引き出すための政策をいくつか提案いたします。国の施策に関連するものもありますが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

1 中小企業憲章、「条例」のもと、中小企業の社会的意義を広げてください

●国は平成22年(2010年)に中小企業憲章を閣議決定し、平成29年(2017年)には広島県で「条例」が制定されました。さらに、中小企業庁は令和元年(2019年)に7月20日を中小企業の日、7月を中小企業魅力発信月間とし、中小企業の存在意義や魅力等に関して、正しい理解を醸成する機会を国民運動として提供していくとしています。広島県がリーダーシップをとり、各市町、経済団体、金融機関や学校など、地域で連携した中小企業の日・魅力発信月間の具体的な取り組みを進め、若者が広島で働くという選択肢を持つような教育や、中小企業の社会的意義を広げるために、地域や学校を対象にした「企業見学会」などがすすむよう支援をしてください。

●広島県の「条例」には「県の責務」として、第4条2「施策の策定・実施にあたっては、相互に連携して取り組むものとする」とあるように、「中小企業団体等の交流や連帯の場」をつくり、「業種別の懇談会等」で業界の抱える課題を集約し、発信するように努めてください。また、条例の下、企業(団体)や教育(学校)など新しい連携が地域の中で生まれるような支援をしてください。

●地域でお金を循環させることで地域経済はより活性化します。地域循環を起こすためにも、条例の具体化のひとつとして、行政からの発注は可能な限り地域へ発注をしてください。そのための発注ルールを検討してください。その結果、県からの発注がどの程度県内に発注されたか、発注状況を公開してください。また、県内発注によって、どのような経済循環が起こったか、検証をしてください。

2 雇用を増やし、地域に人材を育む取り組みを

●アンケートでは928人(52.9%)の会員が、従業員不足を課題としてあげています。雇用の確保は県の課題にもなっている若者の県外流出を防ぎ、持続可能な地域づくりに大きく貢献します。「条例」第12条に沿って、学校教育の中で健全な労働観や地域社会観を育み、中小企業も働く場の選択肢となるよう取り組みをお願いします。その具体的な取り組みとして、憲章の精神に則り、学校と中小企業者の連携、職場体験・インターンシップを小学校・中学校・高等学校・大学の授業の一環に組み込むよう提案いたします。呉支部は呉市と連携して「高校生と保護者のための企業ガイダンス」を開催。高校生や保護者に地域にある働く場を伝える取り組みを行っています。また、全国の同友会では、共育型インターンシップなど、会員企業と学校が連携しキャリア教育を行い、労働観や職業観の育成だけではなく、主体的に学習に取り組む生徒の育成につながる事例も広がっています。また、企業見学など、各市町で中小企業を知るユニークな取り組みが始まるよう支援してください。併せて、Uターン、Iターンなど就職先として地域に根ざした中小企業もその選択肢となるような政策をしてください。

3 情勢変化を受けて迅速で総合的な支援を

・原材料やエネルギー費の高騰、円安の進行、そして賃上げ圧力が高まる中、その対応として価格転嫁が言われていますが、現実にはなかなか転嫁は進まず、中小企業経営は厳しさを増しています。仕入れ価格が半年前と比べ1~10%上昇した企業が954社(54%)、これに対する価格転嫁は「まったくできていない」、「2割程度まで」を合わせると1101社(64%)が充分な転嫁ができていません。1%~5%の賃上げした企業は893社(80%)、これに対する価格転嫁は「まったくできていない」、「2割程度まで」を合わせると828社(73%)が充分な転嫁ができていません。このように幅広い中小企業が支援を必要とする状況です。限定的な課題のみへの支援ではなく、複合的な要因にも対応した総合的な支援を望みます。また、県の公共事業や物品発注にあたっては、原材料価格の高騰や人手不足を余裕のある工期や納品スケジュールになるよう柔軟にすすめてください。

●「賃上げをした(する)67%」と中小企業においても賃上げが進んでいます。しかし、賃上げ幅は「5%までが80%」で、物価上昇率や社会保険料の負担増を考慮すると、実質賃金増には繋がっていません。さらに賃上げ分の価格転嫁は「まったく転嫁できていない38%」、「2割まで36%」7割以上の企業で進んでおらず、結果、「人件費の増大」が経営課題のトップ(37%)になっています。最低賃金も今秋1000円を超える見通しです。賃金増は、個人消費の活性化につながり、GDPを押し上げ、景気回復につながる大きな要因です。しかし、国を挙げて賃上げが言われるも、現状では、中小企業の自助努力に任されている状況です。賃上げに取り組む企業への手厚い支援はもとより、血のにじむような賃上げ努力が報われるように、個人消費に逆行する増税や社会保険料増ではなく、消費税減税など税の軽減、社会保険料の減免、価格転嫁の促進など、国民の可処分所得が増えるような具体的な支援を望みます。

以上