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2024.10.24

企業訪問「生産者と協力しながら、豊かな海と企業発展をめざす」クニヒロ(株)

会場:
クニヒロ(株)
人数:
10名
報告者:
クニヒロ(株) 代表取締役 新谷 真寿美 氏(尾道支部)
文責者:
事務局 橋本

2025年6月26~27日に、中同協の「環境経営全国交流会」を広島で開催します。ぜひご予定ください。
その分科会報告者の一人に予定されている、クニヒロ(株) 代表取締役 新谷真寿美氏(尾道支部)を訪問し、工場見学をさせていただき、お話を伺いました。以下、その要旨です。

自社紹介

わが社は1957年に祖父が安芸津で生牡蠣の販売をしたのが始まりです。以後、大手食品会社の協力工場となり、工場を増設しながら現在に至ります。
売上構成は牡蠣が約80%、その他約20%で、業務用食品が70%を占めています。年商は120億円の壁を行きつ戻りつしています。利益の90%は牡蠣関係なので、新規事業の必要性を感じており、お魚総菜店「源内亭」や飲食店「尾道ワーフ」を運営したり、数年前に鯛や鱧などの天然魚の加工販売をしていた「北風鮮魚㈱」をM&Aするなど事業の多角化に取り組んでいます。

国内初のEUへの生牡蠣輸出

「安全・安心・健康」を企業のテーマにしており、その実現のために、ISO9001・14001やHACCP・FSSC22000・ASC/MSC CoC・MEL CoCなどの認証・取得に取り組んできました。認証の内容によっては、養殖業者さんの協力が必要です。

今年、国内企業としてははじめてEUに生牡蠣の輸出をしました。EU圏へ二枚貝を輸出するにはEU HACCPの認証取得が必要のため、その認証・取得に取り組みました。養殖業者さんには、それぞれ細かい計測と記録が求められます。そうしたことが、養殖業者さんにもメリットであることをお伝えし、納得いただくことの積み重ねで実現しました。

牡蠣を取り巻く環境課題

牡蠣は海産物ですので、その環境にはわが社も無関心ではいられません。牡蠣を取り巻く環境問題には、時間軸ごとに課題があります。
短期的には牡蠣殻の処理の問題です。大量にでる牡蠣殻は、これまで農業用の肥料や飼料、建設材料、漁礁の材料などに使われてきましたが、まだすべてを活用するところには至っていません。

中期的には、栄養塩の問題です。かつて瀬戸内海は深刻な海洋汚染に悩みました。そこで「瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)」ができ、取り組みが進みました。ところが今度は海がきれいになりすぎて、魚や牡蠣の生育が進みにくくなったのです。そこで21年に、瀬戸内法が改正され、「きれいな海」から「豊かな海」づくりに、県政もシフトをすることになりました。栄養塩を増やす取り組みが始まっています。

もうひとつ、海水の酸性化も問題です。空気中の二酸化炭素が海水に溶け込むことで起きるのですが、これが進むと牡蠣の殻ができにくくなるのです。
長期的な課題は、海水温の上昇です。宮城県の牡蠣は前年の5割にとどまりました。瀬戸内海でも記録的な牡蠣の不作となりました。
これらのことは、弊社1社ではどうにもなりません。行政や心ある他の事業者、漁業者などとも連携して、対処のために様々な活動が始まっており、弊社もそれに参加するようにしています。尾道市が進めているアマモ育成への協力のほか、2ヵ月に1度、海岸や工場周辺の清掃活動「クニヒロクリーンナップ活動」も継続していきたい。父が始めた「尾道あさりプロジェクト」にも協力していきたいと思っています。

これから

EUへの輸出は始まったばかりですので、これを伸ばしていきたい。名産地としての広島を大事にしながら、海外でも加工販売できるように取り組みを進めたいと考えています。
「原料を持つもの」が一番強い時代になっています。私たちは生産者の方々と協力しながら、海の豊かさを実現し、企業の発展を目指していきたいと考えています。