活動レポート
2024.12.20

GO WEST  ユダ木工(株)

開催日時:
2024/12/20(金)
報告者:
ユダ木工(株) 湯田 卓 氏
文責者:
ひとつ麦 吉原 幸子

代表取締役
湯田 卓(ゆだ たかし) 氏

所属地区会:廿日市

<会社概要>
創業:1924年1月1日
事業内容:高級木製ドアの製造・販売 造作材・インテリアパーツの製造・販売

〈URL〉
https://www.yudawood.com

あきらめることなく歩んだ100年

廿日市市木材港に位置するユダ木工(株)は木製ドアの製造会社です。湯田社長に、これまでの歩みとこれからのビジョンについてお聞きしました。

100周年の感謝祭
2024年11月、めでたく100周年を迎えました。節目として社員一同による感謝祭を開催し、従業員と従業員家族、OG、OBなど、これまで様々な形で支えてくださった方々と共に喜びを分かち合いました。担当社員の工夫が詰まった屋台が並び、有志のコンサートがあり、工場案内、歴代の木製ドアの展示と、まさにユダ木工(株)の100年を表した、温かな「手づくり」の場となりました。これまでの様々なことなども思い起こされ、胸が熱くなった次第です。

建具屋から、ドアの製造会社へ
1924年に五日市にて、湯田建具店として祖父が創業。叔父と父が戦後復員して1945年湯田建具店のバトンを受け継ぎました。戦後復興の中仕事は忙しかったそうです。その中で思い出深い仕事がありました。1951年山口県山口市の山口ザビエル記念聖堂の正面玄関ドアの仕事です。
当時は日本家屋の木の雨戸、障子、ガラス戸を作っていた建具屋でしたから、全く新しいヨーロッパの文化に接し大きな衝撃を受けました。そしてこれをきっかけに、ドアの製造会社へと歩みはじめます。
残念なことに山口ザビエル記念聖堂は1991年火災に遭い、ザビエルの故郷の城の扉を模した重厚な扉も焼失しました。ユダ木工(株)の正面玄関扉として、今もその意匠と技術を復元したレプリカでご覧いただくことが出来ます。

新商品「枠付きユニットドア」
時代は高度成長期へ入り、住宅建築がどんどん進められました。当時は、出来上がった家の枠の寸法に合わせてドアを製作するのが当たり前。そんな中、他にさきがけて枠付きユニットドアを開発。今では逆に、ドアの枠の規格に合わせて家が設計されています。大量生産が可能な枠付きユニットドアは、爆発的な主力商品となりました。

国産材への転換
2006年、「漁民の森づくり」に参加したことで、地域の山が荒廃している事実を知りました。
当時、安価な外材が国内に流入し、国産材が売れなくなり、林業を営んでいた人々が山から離れ、結果として山が荒れていたのです。山からのミネラルが川へ流れて海へ循環していくのですが、山の環境悪化は海の環境も損ね、そこに育つ魚や牡蛎の生育も悪くしてしまう。
そうした事実を知り、当時外材100%だった材料を、国産の木材に転換しようと決めました。そして2011年には、国産ヒノキを材料とした「MIYAMA桧玄関ドア」が誕生しました。その後「MIYAMA桧玄関ドア」は進化を続け木製断熱気密ドアとして開き戸、引き戸、防火、超断熱、電気錠等など価値を加えて、鹿児島から北海道まで広く出荷させてもらっています。

長年の技術の蓄積が可能にしたこと
実は国産ヒノキによるドア製作は、大変ハードルの高いものでした。なぜなら国産のヒノキでドアを作ろうとしても、2006年には柱、梁など建築構造材としての製材品はあってもドア材としてのヒノキの製材品はありませんでした。当時輸入される建築外材に押され、国産材の自給率も20%と過去最低の水準にありました。
そこで2007年から地元製材所と提携し、山の木材市場でドア材に合う木材を目利きし購入、指定サイズで製材、捨てる皮の部分もすべて当社工場に納入してもらうことにしました。当社では節の部分も上手にドア材に使い、皮の部分はチップにしてバイオマスボイラで燃やし、蒸気にして木材乾燥の熱源として利用いたします。山からドアへと言う新しい木材の流れが出来ました。こうして一本の木を丸ごと買ってすべて使用する事が可能となりました。

葉っぱの世紀のはじまり。
2011年に東日本大震災の年、新たなスローガンが生まれました。「葉っぱの世紀のはじまり。」です。これは植物の葉っぱが、太陽の光と、大地の水と、二酸化炭素(CO₂)で、酸素(O₂)に替える光合成が、もともと酸素なんてない地球が46億年前に誕生して以来、酸素を作り続け、人類や生き物に恩恵をもたらしてくれている事を知り、その素晴らしさを社会に訴え始めました。「葉っぱは緑の太陽光パネル」葉っぱは太陽の光をエネルギーに変えてくれることも訴えました。しかし現実は地域の山は荒廃し、何とかせねばと言う思いはますます強くなりました。
断熱性、気密性の良い木製ドアや窓を設置すると、家庭で使用する電気をはじめとしたエネルギーを減らせます。広島近県のヒノキを使用すれば輸送時のCO₂を減らせます。さらに山が吸収するCO₂を買い取るJ-クレジットで日本の山を育てる活動を支援。梱包で使う緩衝材を発砲ポリスチレンから紙管段ボール製へ、梱包用ビニールをサトウキビの搾りかす由来のものに、緩衝材も紙のものに代えました。塗料も手入れがしやすい植物油由来のものに代えました。これによって、お客様自身で我が家の手入れが出来、経年美を楽しめるようにもなりました。屋上では養蜂も始めました。

『2030年ビジョン』ができました
2021年3月コロナ禍の時、10年後のユダ木工(株)を考えるプロジェクト=「夢ビジョン」委員会が始動しました。若手の社員と一緒にユダ木工(株)を10年後どんな会社にしたいか議論しました。全社員にアンケートを実施して、分析して、討議を繰り返し、更に3回の話し合いの後に出来上がったのが『2030年ビジョン』でした。ちょうど2030年がSDGsの目標年なのでそこに照準を合わしました。そうして生まれた合言葉が「働くをワクワクにしよう」でした。夢と言うものは実現させるためにある。その中に書かれていることはちょっとずつですが実現し来ております。夢は、かかげなければ絶対実現しません。

あきらめなかったから今がある
「晴れの日もあれば雨の日もあるように、ユダ木工(株)にも大変な時があった。そのたび助けてくれた従業員がいて、仲間がいた。そのおかげ100年目を迎えることができた。社長一人では絶対に出来ないこと。だから社員の、そしてすべての人の末永い幸せを願い、ワクワクする仕事を次世代に残したいと思っています。」そう語ってくれた湯田社長の笑顔は穏やかでとても眩しいものでした。

ユダ木工(株)へ行きましょう
皆さんも是非、ユダ木工(株)の工場見学へお出かけください。重厚な正面玄関扉、ショールーム、工場、そして生き生き働く職員の皆さんをご覧ください。そこには1日では成らない、年輪を重ねた大木のようにどっしりとした企業の姿があります。世代を重ねながら多くの人に心を寄せられ、磨かれたゆえの企業の理念があります。
まだまだ不十分、と思いながらもあきらめずに日々努力を続ける先に「うん、近頃は出来てきたかな」と思える日がやってきます。そのように着実に歩んでこられたユダ木工(株)をどうぞお訪ねになってみてください。