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2024.12.26

経営フォーラム2024 第4分科会 環境経営・SDGs「トップダウン経営から、人を生かすSDGs経営へ~誰一人取り残さない経営の実践~」

開催日時:
2024/10/11(金)
会場:
リーガロイヤルホテル広島
人数:
58名
報告者:
(株)藤岡保険コンサルタント 代表取締役社長 藤岡 徹也 氏(広島西支部環境経営委員長)
文責者:
事務局 大塚

■事業継続の危機

当社は、損害保険・生命保険を扱う保険代理店です。父が創業して今期で45年目になります。今から25年ほど前に、同じ日に全社員から退職の申し出がありました。当時私はまだ学生でしたが、社長であった父は社員に対しても大変厳しかったこともあり、長く続く社員さんはほとんどいませんでした。
私は、24歳の時に入社しました。そんな中、当社にとって最大の危機が訪れました。取引先の保険会社と父とのコミュニケーションが仇になり、委託解除通告を受けました。最終的に契約解除は免れたものの、とても悔しく苦しいものでした。この時の経験は、私自身、決して忘れることができない人生のターニングポイントになりました。

■トップダウン経営

30歳の時に同友会に入会しました。父と保険会社とのトラブルもあり、社内の雰囲気や業績は急激に悪化していました。このままでは事業経営に影響が出るため、事業承継を行いました。また代表に就任後、営業力の立て直しを図るために、初めて新卒の女性社員を採用しました。その結果、これまでに無かった活気とたくさんの笑顔が社内に戻ってきました。
その頃から同友会の経営指針セミナーや保険会社のセミナーに積極的に参加しました。経営指針は初めての挑戦でやっとのことで完成させました。しかし社内の発表を待たずに、新卒入社の社員から退職の申し出がありました。退職に至った要因は、当時私に根付いていた「お客様第一主義」という誤った信念と「トップダウン経営」でした。お客様のためなら絶対にミスは許されない、お客様のためにも苦しい時こそ根性で乗り切らなければならないと信じていました。この信念が社員を苦しめ追い込んでいたことが分かりました。私は父と同じ過ちを犯していたのです。

■病との闘い

私は、約6年前に突然病になり倒れました。病名は脳骨髄液減少症です。主な症状は頭痛や首の痛み、めまいが出ます。完治が難しい病気で、今も手足のしびれが続いています。
病で倒れるまでは、会社の全てを把握していないと気が済みませんでした。そんな中、病になり唯一良かったと思えることは、社員一人一人に、主体的に仕事を取り組む姿勢が企業文化として根付いてきたことです。社員が自ら考えることで、仕事に対する意識や目標が目に見えて変わっていきました。

■SDGsを通じた「企業文化の醸成」

自らの病やコロナ禍で、会社のビジョンや目標を失いかけている時、地球温暖化に関する番組を見ました。それは1992年に開催された地球サミット 国連環境開発会議でのスピーチでした。今を生きる現役世代の一人として、この先安心・安全に暮らせる社会の実現のために事業活動とSDGsを結び付けて実践することを決意しました。

SDGsは、2030年までに達成するべき17の目標を掲げています。貧困や健康、教育、ジェンダーなど様々な分野があります。経済産業省の中小企業のSDGs推進に関する実態調査によると、注力している分野として、環境保護が上位にあります。太陽光の導入や環境に配慮した商品のPRも進んでいます。また「つくる責任、つかう責任」も重要で、食品ロス削減などの取り組みが広がり、消費者に受け入れやすいSDGsとして注目されています。その中で第1位は、「働きがいも経済成長」です。人材の定着や採用において、SDGsを通じて企業文化の向上につなげています。人材不足の問題は、多くの企業が悩んでいる経営課題の一つだと思います。そこで私は、社員の働きがいと生産性向上を高めるために、大きな2つのビジョンを設定しました。
1つ目はDX(デジタル・トランスフォーメーション)デジタルの推進です。2つ目はGX(グリーン・トランスフォーメーション)です。これらは、環境と経済を両立させるビジネス戦略になります。私は、デジタル化を通して業務の生産性を高めつつ、お客様の利便性と社員の働きがい向上を目指してきました。今ではほとんど残業がありません。健康増進や地域の防災などに自然とつながり、社員の働く意欲や会社の業績に良い影響を与えています。

■働きがい改革の実践

これからの時代は、「働き方改革」から「働きがい改革」です。私が目指しているのは、社員が主役のSDGs経営です。SDGsを上手に活用して社会的責任を果たしていきながら、社員の働きがい向上につなげています。経営者の考え方で大きく会社は変わるのです。地域社会に貢献したい、社員や家族を幸せにしたい、しかしいつ災害に巻き込まれるか分かりません。私もいつ持病が悪化するかも分かりません。だから今この時間しかないという覚悟を持ち、当社の目指すビジョンを実践しています。

■社員の笑顔と喜びが私の生きがい

昨年、業界をリードする環境先進企業として環境大臣より「エコファースト企業」に認定されました。小規模事業としては全国初の快挙になりました。このような取り組みが会社の利益に直結することはありませんが、社内で一体感をより高めることができたと思います。
SDGs経営を取り組む上で最も大切なことは、「利益を出し続ける」ことです。もちろん、利益追求と社会貢献を同時に行うことは簡単ではありません。私の夢は、社員とその家族を幸せにすることです。これを実現するためには、実現したいという強い決意と強い情熱が必要です。そして私が大切にしているのは「感謝」と「心の豊かさ」です。当社の行動指針には「ありがとう」の精神」が込められています。社員の笑顔が私の「幸せ」であり、社員の喜びが私の「生きがい」です。

■人は皆支えられて生きている

私自身、多くの人に支えられながら生きてきました。病気を患っている際に支えてくれた妻の存在がなければ今の私はありません。家族や周囲の支えがあってこそ、今成り立っていると実感しています。これは会社も同じで、他者との協力や支援がいかに大切であるかを学びました。
 持続可能な経営は、一人の力では成し遂げることができません。これからも社員とともに協力して成長し続けていきたいと思います。

【会社概要】
設立 1979年9月1日
資本金 300万円
年商 5,300万円(2023年年度)
社員数 7名
事業内容 損害保険・生命保険代理業