経営フォーラム2024 第8分科会 学びと実践「四代目どん底奮闘記 ~自社分析がもたらした奇跡の日本一~」
- 開催日時:
- 2024/10/11(金)
- 会場:
- メルパルク広島
- 人数:
- 40名
- 報告者:
- (有)I WILL 代表取締役 安達 亮 氏(尾道支部)
- 文責者:
- 事務局 橋詰
■自社・自己紹介
弊社は2025年10月に創業90年を迎える写真館と、ダンススクールの運営をしています。経営理念は「世界に笑顔の花を咲き広げよう」で、写真やダンスを通じて、心躍る空間を提供するプロ集団であり続けることをめざしています。私自身は2022年に4代目として代表取締役に就任。同友会へは2010年に入会しました。
2018年より以前、弊社は厳しい状況が続く「どん底期」で、安定した利益を出すのが難しい状態でした。藁にも縋る思いで2018年に尾道支部の有志の会「寺子屋」に決算書を持って参加し、数字に向き合った結果、2019年には利益が出るようになりました。その後、コロナ禍で売上は減少したものの、利益を確保し、社員の給与を全額支給することができました。
写真館は2022年開催の全国写真スタジオアワードにて評価を受け、全国の写真館の中からグランプリを受賞。社員はもちろん、社員の家族とも喜びを分かち合いました。2024年開催の富士フイルム営業写真コンテストでは銅賞を受賞。ダンススクールでは、定期的にダンス発表会を開催しています。直近では第8回スタジオライブを行い、延べ400名以上の方にご来場いただきました。
■数字に向き合う~自身が変わらなければ会社は変わらない~
「どん底期」は、お金が常にマイナスという状態でした。当時は父と母が経営をしており、特に返済時期の近くになると険悪な空気が漂い、後継者である私は数字のことが分からず人のせいにして愚痴ばかり。ある日、そんな私を見た同友会の先輩から「他人のせいにしている安達さんが一番いけない」と指摘されました。
この時になってやっと、他人に責任を押し付けるのをやめ、自分自身が変わらなければ、会社は変わらないのだと反省しました。そのころにちょうど、二代目でもあった祖父が亡くなりました。このままでは祖父に顔向けできない、絶対に立て直すと決意し、同友会の青年部会と寺子屋に本気で参加しました。「寺子屋」では月次報告や実績の振り返り、悩みや課題を具体的な数字をもとに話し合い、実際に店舗を訪れて改善点をアドバイスし合う活動を行っています。壮大な夢ばかりを見ていた私が、数字と向き合い、売上に対して邁進していくことができるようになりました。数字に向き合って気が付いたことは、①経営者にとって知らないということが1番悪であること。②この「知らない」ということが、自分の社員の家族まで路頭に迷わせ、自分の家族まで路頭に迷わせることになることです。数字からも夢からも逃げない姿勢が、経営者としての責任だと考えさせられました。
■41ビジョンシートの活用で未来設計と実践
苦しい経営を脱するために、新しい戦略が必要でした。ですが、新たな投資をする資金はありません。そのため、現在持っている資源を徹底的に洗い出し、お金を使わずに攻める方法を模索しました。
洗い出して出てきた㈲I WILLの強みの一つは、学校写真の事業でした。作業量の多さもあり注目をしていなかった資源でしたが、生徒・先生とコミュニケーションをとり、信頼関係を構築した結果、学校契約数が地域でも圧倒的ナンバーワンになっていたのです。現在の資源を最大限活用するために、社員にとって現実的で取り組みやすい方針・目標を設定することで、売上の向上を図りました。これらの取り組みが実績として形になり、自信にもつながりました。
これならばと、初めて作成した事業計画を持って銀行に融資を依頼しに行きます。予想に反し、「夢物語ではなく、実績を伴った現実的な計画を持ってきてほしい」と冷ややかに指摘されました。悔しい思いをしましたが、現状を受け止め、受け入れなければ前に進まないと思いました。
前に進むために、と取り組んだのが「41ビジョンシート」でした。このシートは2年前から遡って、5年後の未来を具体的に描くための計画書です。シートには、売上や経常利益などの目標数値だけでなく、達成するための行動計画や人材確保の方法なども記載します。さらに、重点目標や福利厚生、営業目標、新商品開発といった詳細な項目を記載する欄が設けられています。
このシートをもとに、目標達成に向けた行動を続けた結果、いくつかの未来の目標が予想以上に早く達成されることがありました。例えば、社員旅行を実現するという目標を5年後に設定していましたが、収益が改善したことで計画より早く実現できました。未来のビジョンを描くことで現在の行動が変わり、結果的に目標達成が加速したことに、私自身驚きました。
実はこのシートを発表する日、社員が退職を申し出ました。泣きながら、「仕事は好きだけれども働く環境を家族のために変える必要がある」と、深く悩む社員に、シート内のビジョンを共有し、よりよい環境改善を一緒につくろうと話をすることができました。ビジョンを共有する大切さを実感しました。
■お客様満足度に、社員の幸せと自主性は不可欠
次に、経営指針塾に参加しました。たくさんの宿題と多くの指摘に挫けそうなこともありましたが、社員と共に宿題をすることで、社員とお客様と共に喜びを分かち合える企業への第一歩を歩むことができました。
特に印象に残っているのが、「SWOT分析」を一緒に行ったことです。
分析を通じて、会社の強みや弱みについて、経営者と社員の間に大きな認識のズレがあることが判明しました。各々が考える強み・弱みを元に会議を進めることで、社員が考える強みを経営計画や働く環境の改善に反映できるようになりました。また、会議の雰囲気が大きく変わりました。それまではトップダウンで進められていた議論が、社員主体で進行するようになり、会社全体のチーム力が向上しました。
その結果、私たちは全国写真スタジオアワードで、日本一の評価を受けることができました。受賞できたのは、社員と共に改善点を見直し、社員自身が考え、具体的な行動に落とし込んだからこそだと思います。
お客様にとって楽しい空間を作るためには、社員が幸せであることが必要不可欠です。これからも社員やお客様と共に喜びを分かち合える企業をめざしていきたいと思います。
■笑顔咲くワクワクする地域・未来へ、社員と共に
今後のビジョンとして、地域社会に貢献するビジネスモデルも構築を掲げています。地域の皆様がワクワクするような地域活性化の活動をしたいと考えています。また、ダンススクールについても展望を掲げ、現在、未来の事業展開に向けた基盤づくりを行っています。
弊社の経営理念は、「世界に笑顔の花を咲き広げよう」です。
課題は次から次へと見つかりますが、この理念をもって、社員と未来を描きながら新しい挑戦を続けています。ワクワクする未来をつくれば、社員も自主的に行動する、全員が楽しく幸せな会社になると信じているからです。
今日よりも1歩、2歩でも前進できるように、ワクワクした未来が作れるように、自社と向き合い、明るい未来をつくりたいと思います。
【会社概要】
設立:1935年10月8日
資本金:700万円
年商:6,400万円
社員数:11名(内パート9名)
事業内容:フォトスタジオ「土居写場」・ダンススクール「スタジオ来夢」・ダンスイベント事務所