「ウ〇コと呼ばれた男の企業再生物語 ~業界常識を打破し、夢が持てる企業へ」広島中支部オープン例会 報告要旨
- 開催日時:
- 2025/02/12(水)
- 会場:
- オリエンタルホテル広島
- 人数:
- 97名
- 報告者:
- (株)ENENTOS 川中 英章 氏
- 文責者:
- 事務局 橋本
わが社は、俗にいう飲食小売り(仕出し)業です。パーティーケータリングサービスを主力事業にしており、広島を拠点に半径100Kmを商圏にしています。以前は多くの企業がこの仕事をしていましたが、次第にオンリーワン(ロンリーワン?)になってきました。同友会には20年前に採用を目的に入会しました。以後、新卒採用を続け、今では新卒者が社員の7割を超えています。
■「ウ○コ」と呼ばれたことが変化のきっかけに
バブル崩壊で仕事(パーティー)がどんどんなくなっていた時期、広島で唯一のソムリエのいるワイン居酒屋という業態を作りました。これが大当たりし、調子に乗って店舗展開をした結果、財務業況が厳しくなりました。そこである方に相談に行ったのです。私が言うのは、愚痴ばかり。するとその方が、「要するに君の周りはハエばかりなんだな。それは君がウンコだからだよ。蝶に集まってもらいたかったら、君が花になるべき」と言われました。自分が変わらなければならないと決意した一言になったのです。
その後、ウエディングプランの会社との取引が始まり、V字回復を果たしました。途中まではコースで、途中からビュッフェといった、それまでの業界の常識を破る提案にも応えました。

■社員さんの家庭訪問で父上から言われた一言
2007年には初めて6名の新卒者に内定をだしました。先輩方のアドバイスで、家庭訪問をした時のことです。お父さんから「大学を卒業してまで働く価値のある仕事ですか」と言われました。
その時は、悔しくて腹が立つばかりでしたが、帰りの車中で「地域の同業他社の方々のサービス向上に革新的な刺激を与える会社になる!」という経営ビジョンが突然浮かびました。
■食を通した農村活性化事業
食品偽装などの問題がクローズアップされ、今では当たり前の、「安全・安心な食」が求められました。つまり、社会が認めてくれる事業をしなければならない、ということです。そこで農業に注目しました。
市役所に13年放置された農地を紹介してもらい、まさに開墾作業をしました。ただ農地にはトイレがなく、女性には大問題。トイレだけでも投資に数百万円かかるという。そこで出来上がったのが、レストラン付トイレ(笑)、吉山ビアンコです。
こうした取り組みを始めたことで、離職が急激に減っていきました。これも地域のおかげだと、何かお返しができないかと地域に希望を伺って出来上がったのがレストラン付き産直市「Oishi吉山」です。農家の持ってこられるものは全量買い取ります。規格外のものはすぐに調理に回しています。
こうした取り組みも認められ、「地域未来牽引企業」に選定されました。それが島根県江津市の有福温泉の再生事業に関わるきっかけになりました。
■幸せを追求する企業に

事業を進めるためには、社員との信頼関係確立が必要です。社員さんは経営者の損得勘定を観ています。信頼の前の、信用を得ることが大事なのだと思います。
その一つが財務諸表の社内開示です。社員さんが考える原資の情報を共有する、ということです。
働く環境の整備には、採用時の雇用契約の中に、職位ごとの担う役割と責任、賃金規定で未来の見える化、評価基準、ライフステージに合わせた業務設計などを示すことが大事です。休みなどの数字を挙げればよいというものではありません。一番大事なのは一人ひとりの誇りと働き甲斐ではないかと。
同友会が示す自主・民主・連帯の精神の深層には「人間らしく生きる」という意味が込められています。人間にだけ与えられた力、未来の夢を見ることのできる会社にすることが大事だと。それを支えるものの一つが、社員参加による「10年ビジョン」です。
幸せをめざすところに人は集まります。幸せのリーダーシップを発揮しましょう!